EV電池の送電接続こそが日本の生きる道だ 瀧口信一郎
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狭小住宅の緻密さで日本独自の蓄電システムを作り、輸出産業に育てる道もある。
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再生可能エネルギーや電気自動車(EV)の普及で米欧中に後れている日本にも残された道はある。日本各地に分散する太陽光発電や水力発電などを蓄電池を使って有効利用した分散型のエネルギーシステムの構築だ。
大型発電所や長距離送電線のようにコストもかからない。固定価格買い取り制度(FIT)で太陽光発電は日本中に広がった。
大型のメガソーラーが設置できる場所が限られるため、今後日本が取るべきは屋根置き太陽光発電を需要近くに設置し、余剰電力を地域で共有、電力をためながら効率的に使うことだ。
この際、蓄電池のコストが問題になるが、EVの大量導入が始まった中国や欧州では蓄電池のコストは下がっている。
今から電池大国の中国や韓国に太刀打ちできるかと疑問視する見方もあるが、重要なのは蓄電池を効率的に使う仕組みだ。モビリティー(自動車産業)×エネルギーのセクターを超えた社会インフラのシェアが鍵となる。
再エネはEVにためる
移動用に企業や消費者が購入するEVを、走行していない時に蓄電池として使うのだ。昼間に太陽光の電力の大量余剰が発生しているカリフォルニアでは、日本以上に昼に太陽光発電が余剰となり、電力の市場価格が低下する。そのため、EVの充電時間を昼間に誘導する事業モデルが出ている。
日本はこれまでEVにためた電力を住宅に供給するビークル・ツー・ホーム(V2H)で他国に先駆けて取り組んできたが、今後はさらに昼間にためた電力を夜グリッド(送配電網)に供給する機能に広げる時代が来る。車両の運行と電力需給調整の管理を並行して行うシステムを普及させ、EVの充放電インフラ整備を電力系統と連携して進めれば「動く蓄電池」を活用したグリッドは形成できる。
日本のエネルギーベンチャーREXEVは、EVを「動く蓄電池」と考え、電力貯蔵するビジネスモデルを生み出した。小田原市の事業では、自治体公用車のEVでカーシェア事業を手掛けつつ、電力調整を行い、走行以外の収入を得ている。車両管理と電力管理をうまくマッチングするシステムを実装しているのだ。
EVで使えなくなった蓄電池は定置型の電力調整用に再利用できる。電力会社が自動車で用いた蓄電池の巨大な受け皿になれば、EV電池を使った社会システムの幅が広がる…
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週刊エコノミスト
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