投資・運用

苦境の楽天 “携帯”撤退が浮上の試金石 町田徹

抜本的な収益改善の道程は遠い(楽天グループの三木谷浩史会長兼社長) Bloomberg
抜本的な収益改善の道程は遠い(楽天グループの三木谷浩史会長兼社長) Bloomberg

 日本株が高値を更新する中で楽天の株価低迷が目立つ。携帯電話事業が重しだ。

>>特集「日本株 沸騰前夜」はこちら

 楽天グループは株価の長期低迷にあえいでいる。5月26日に終値で575円と10年来の安値を付けた後も低水準で推移。同月末の終値も576円と安値圏で引けた。5月は日経平均株価が連日の33年ぶり高値更新で、株式市場全体が沸いた月だけに、楽天の株価の異常さが際立つ展開だった。

 この株安に対して、三木谷浩史会長兼社長以下の経営陣が何もしなかったわけではない。例えば、多様な事業を手掛けるがゆえに、個別事業の成長性が評価されにくい“コングロマリット・ディスカウント”に陥っていると考えたのか、楽天経営陣は、Eコマース(電子商取引)、金融、モバイル(携帯電話)の3大事業のうち、金融の柱である楽天銀行の株式公開に踏み切った。また、携帯基地局の整備のための設備投資が重荷になっているが、今後の社債償還ラッシュを控えて、資金繰りを懸念する市場の声に応えて、自前の投資を抑えるためにライバルのKDDIから回線を賃借するローミングの拡大という契約の見直しを行った。そのうえで、公募増資と第三者割当増資で巨額の資金調達に踏み切っている。

5000億円近い赤字

 しかし、市場はこうした経営努力に冷淡だ。冒頭でも触れたが、楽天の株価はさえず、一昨年4月に1400円に迫った後、ほぼ一貫して下げた。そして、この半年はピークの半分以下の700円にも満たない水準で放置されてきたのである。こうした株価の動きは、経営の対応が小手先に終始しており、そもそも「第4の事業者」になろうと携帯電話事業に参入したのが失敗だったと市場は見ている、と解釈するのが適切だろう。

 なぜなら、セグメント損益をみると、2019年12月期の765億円の赤字を皮切りに、4年連続で赤字を拡大してきたからだ(表)。22年12月期のセグメント赤字は、50…

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週刊エコノミスト

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