インタビュー「損益分岐点を4割下げた」森高弘・日本製鉄副社長
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日本製鉄が過去のしがらみを断ち切り、成長軌道に乗り出した。
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── 2022年度は過去最高の連結純利益(6940億円)。要因をどう分析しているのか。
■当社が重視する実力ベースの事業利益(鉄鉱石など原料在庫の評価損益を除いた利益)でも22年度に7340億円と2年連続で過去最高となった。23年度は8000億円と3年連続で最高益更新を見込んでいる。実力ベースの収益力向上は内部要因の寄与が大きい。
── 19年度から22年度にかけて損益分岐点を4割下げた。
■リーマン・ショック(08年度)後に過去最高益だったのが14年度だが、当時から比べて数量(単独ベース粗鋼生産量)はものすごく落ちている(編集部注:14年度4823万トンから22年度3425万トン)。鉄鋼業とは、数量効果が大きく出る巨大な装置産業だといわれてきたが、(むしろ)構造対策を実施して損益分岐点を抜本的に改善できたことが功を奏した。固定費を2割下げて、損益分岐点は4割下げたことで、数量に頼らない収益体制が確立できたと思う。
── なぜそれだけ下げることができたのか。
■生産設備構造対策で、全国で15基あった高炉を10基に落とすことを中期経営計画(21年3月発表)で決めている。国内の鋼材需要が人口減少とともに減っていく中で改革が必要だと考えた。足元で11基まで休止を決めた。猛スピードで改革を進めてきたのが要因だ。
もう一つは、「ひも付きマージン」の改善が大きかった。これまでは、製品を出荷しながら価格交渉するという、日本特有で世界ではありえない交渉をしてきた。この商習慣の改善を含めて、国際的にみて相当に低かった利幅を改善して、現在は適正な水準に戻している。さらに挙げると、一つは注文構成の高度化に努めている。限界利益(売上高-変動費)が非常に高い商品の比率を上げている。
── (自動車メーカーなど)大口需要家への値上げ提案があると、それ自体がニュースになる。商習慣の縛りがあり、提案自体のハードルが高くて、機会をうかがいながら踏み切れなかった過去があったのか。
■我々にも責任があり、そうしたことを是正して…
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週刊エコノミスト
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