新規会員は2カ月無料!「年末とくとくキャンペーン」実施中です!

投資・運用 日本株 沸騰前夜

注目業界3〈化学〉クレハや三洋化が構造改革

 化学業界では低PBRを改善すべく、構造改革や自社株買いの実施を活発化する動きが出ている。

>>特集「日本株 沸騰前夜」はこちら

 みずほ証券では、半導体材料などの高機能品を製造する特殊化学メーカー17社をカバレッジしているが、2023年度で10社がPBR1倍割れと予想している(5月24日終値時点)。PBRが1倍を下回っている企業に共通しているのが、ROE(株主資本利益率)の低さだ。ROEを三つの構成要素に分解すると、総資産回転率は1回前後、財務レバレッジは1〜2倍に各社おおむね収まっており、当期利益率の低さがROEを引き下げる主たる要因だ。すなわち「稼ぐ力」が低下している。

 特殊化学メーカーの場合、半導体材料やディスプレー材料で世界シェアの高い製品を持っているほか、農薬や医薬品原料、医療機器などライフサイエンスのウエートが高く、外部環境の影響を受けにくい収益構造が特徴だ。一方で、樹脂(プラスチック)やフィルムなど収益性の低い事業も併せ持っており、全体の収益を押し下げる要因となっている。

 最近、経営計画を発表した企業で目立つのが、事業ポートフォリオ改革だ。例えば、クレハは23年4月に発表した新中長期経営計画で、「環境・エネルギー」「ライフ」「情報通信」の3分野を重点事業に位置付け、「技術立社」の再興を図るという攻めの姿勢を打ち出した。5月に新中期経営計画を発表した三洋化成工業は、自社の製品を「高付加価値製品群」と「基盤製品群」に大別し、収益性の高い高付加価値製品群にリソースを集中する一方で、基盤製品群は生産プロセスの改善や構造改革に取り組むといった方向性を明確にした。

配当性向の引き上げも

 化学業界全般にいえることだが、事業領域が多岐にわたるため、好調な事業の陰で不振な事業が看過されてきた経緯がある。「稼ぐ力」を取り戻すためにROEやROIC(投下資本利益率)を駆使することで、不採算事業を再認識すれば、コスト削減はもとより、他社との業務提携や業界再編に発展する可能性があろう。

 また、ROE向上策として、自己株式取得や配当性向の引き上げなど資本政策も有効と考える。23年1〜3月…

残り343文字(全文1243文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)が、今なら2ヶ月0円

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

12月3日号

経済学の現在地16 米国分断解消のカギとなる共感 主流派経済学の課題に重なる■安藤大介18 インタビュー 野中 郁次郎 一橋大学名誉教授 「全身全霊で相手に共感し可能となる暗黙知の共有」20 共同体メカニズム 危機の時代にこそ増す必要性 信頼・利他・互恵・徳で活性化 ■大垣 昌夫23 Q&A [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事