注目業界5〈小売り〉焦点はイオン系ドラッグの統合
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高齢化社会では、調剤薬局を併設するドラッグストアの役割が重要になる。
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超高齢化社会に入った日本で、小売業最大の注目は調剤薬局を併設したドラッグストアだ。薬、日用品、加工・冷凍食品など幅広い商品を扱い、近年では精肉や野菜などの生鮮食品を売る店舗もある。コンビニエンスストアに比べて価格も安く、年金で家計を支える高齢者に向いている業態だ。
ドラッグストアで再編が起こるとすれば、同業同士の合併や経営統合による水平的な拡大が基本である。購買力の拡大や物流の効率化など規模のメリットを出しやすい業態であるからだ。
注目は、イオン系のドラッグストアチェーン3社──ウエルシアホールディングス(HD)、ツルハHD、クスリのアオキHD──による統合だ。売上高合計で2.5兆円に迫る。調剤併設店舗数でも日本トップ。統合による規模拡大は、高齢化時代における社会の要請でもある。まだ家族経営の零細な業者が多いこの業界を効率化することは、健康・医療行政だけでなく、医療費削減の観点で国の財政にも直結する。行政にも大きな影響力を持つようになるだろう。
ただ、イオン系3社による統合は、しばらく先になりそうだ。出店の最前線で3社による競合が始まっており、統合への機運は熟しつつあるが、臨界点には達していない。イオンの持ち株比率は、ウエルシア50.54%、ツルハ13.35%、クスリのアオキ9.9%とばらつきがある。イオンの岡田元也会長はツルハの社外取締役を16年間務めた後に21年に退任。これをもって「イオン系ドラッグ3社の再編統合はなくなった」との見方もあるが、そのようなことはないだろう。
コンビニ調剤は魅力
ドラッグストアに隣接する業態として調剤薬局チェーンがある。セブン&アイHDが出資(7.7%)するアインHD、ローソンが3.3%出資するクオールHDの動向は注目だ。ローソンを傘下に持つ三菱商事、セブン&アイと親密な三井物産の両商社が、広い意味での医療事業拡大の拠点として、これらの調剤チェーンに接近すると予想するからだ。
三菱商にとって、ローソンの企業価値を上げるためにも調剤は…
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週刊エコノミスト
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