注目業界6〈製薬〉アステラスや武田薬が大型買収
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コロナ明けで製薬業界のM&Aが活発化してきた。株価上昇の大きな材料にもなっている。
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製薬業界でM&A(合併・買収)が活発化している。2022年12月以降、アムジェンやファイザー、メルク(いずれも米国企業)が100億ドル超の大型買収を発表しており、欧米大手の23年第1四半期決算発表では幹部からM&Aに意欲的な発言が相次いだ。コロナ禍では先行きの不透明感からM&Aを控える動きもあったが、経済活動が正常化へと向かう中、再び積極姿勢に転じている。
有望な新薬候補を持つバイオスタートアップの買収は製薬大手の基本戦略だ。医薬品は特許が切れるとすぐさまジェネリック薬が登場し、売り上げは激減する。継続的に新薬を発売できなければ収益を維持・拡大させることはできないが、一方で新薬開発の難易度は上がっている。
ファイザーが430億ドルで買収する米シージェンは、抗体薬物複合体(ADC)と呼ばれる抗がん剤の有力企業だ。メルクが108億ドルの買収に合意した米プロメテウスは炎症性腸疾患向けの有望な治療薬を開発しており、メルクはこれを取り込むことで30年までに予想される大型薬「キイトルーダ」の特許切れに備える。
日本勢にも動きがある。アステラス製薬は5月1日、眼科領域に特化した米スタートアップ企業アイベリック・バイオを59億ドルで買収すると発表。アステラスとしては過去最大の買収だ。武田薬品工業も22年12月、自己免疫疾患治療薬を手掛ける米ニンバス・ラクシュミを40億ドルで買収すると発表した。
上場来高値に
アステラスが買収するアイベリックは、加齢に伴って視力低下や失明を引き起こす萎縮型加齢黄斑変性の治療薬を開発しており、米国で承認申請中。FDA(米食品医薬品局)は8月19日までに承認の可否を判断する予定だ。アステラスは売り上げの4割を稼ぐ抗がん剤「イクスタンジ」の特許切れを27年に控えており、買収で獲得する新薬を「イクスタンジの独占期間満了に伴う売り上げ減少を補う柱」(岡村直樹社長)と位置付ける。5月13日には最大5000億円の売り上げを期待する更年期障害治療薬「べオーザ」も米国で承認され、同社の株価は同23日に上場来高値を更新した。武田やアステラスを抑えて時価総額約9兆円で国内製薬トップに立つ第一三共は、自社開発したADC「エンハーツ」の販売が好調で、25年度…
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週刊エコノミスト
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