経済・企業

日野・ふそう統合 日野の不正問題抱えるトヨタは“渡りに船” 河村靖史

記者会見した(左から)日野自動車の小木曽聡社長、トヨタ自動車の佐藤恒治社長、ダイムラートラックのマーティン・ダウム最高経営責任者(CEO)、三菱ふそうトラック・バスのカール・デッペン社長(5月30日)
記者会見した(左から)日野自動車の小木曽聡社長、トヨタ自動車の佐藤恒治社長、ダイムラートラックのマーティン・ダウム最高経営責任者(CEO)、三菱ふそうトラック・バスのカール・デッペン社長(5月30日)

 トヨタ自動車と独ダイムラートラック(DT)が5月30日、それぞれの傘下にある、商用車子会社の日野自動車と三菱ふそうトラック・バスを経営統合することで基本合意したと発表した。日野と三菱ふそうは経営統合して、それぞれのブランドは残すものの、商用車の開発、調達、生産分野を統合する。両社を統合した持ち株会社はトヨタとDTが株式を同じ割合で保有するが、上場する予定だ。

 提携を最初に持ち掛けたのはDT側で、商用車の脱炭素化対応で主導権を握るのが狙い。カーボンニュートラル社会の実現に向けて自動車の脱炭素化が強く求められており、乗用車は電気自動車(EV)シフトが加速している。課題となっているのが、自動車から排出される二酸化炭素(CO₂)排出量の4割を占める商用車の脱炭素化だ。

 長距離走行する大型トラックや大型バスをEVにするには大量のバッテリーを搭載する必要があるため、その分、モノや人を大量に運べなくなる。DTはこのため、小型トラック・バスはEV、中型トラック・バス以上は水素を補給する燃料電池車(FCV)を展開することで商用車の脱炭素化を推進する。

FCV技術の活用狙い

 すでに直接のライバル関係のボルボトラック(スウェーデン)とはFCV分野で協業しており、次に目を付けたのがFCV分野で先行するトヨタグループだ。提携すればFCVなどの研究開発投資を抑制しながら、高度な技術を活用できる可能性がある。開発で先行する三菱ふそうの小型EVトラックを、日野に供給すれば量産効果によるコストダウンも期待できる。

 トヨタにも「渡りに船」だった。日野では昨年、排出ガスや燃費などのデータを改ざんする不正が発覚。不正は少なくとも2003年からあったとされる。

 トヨタは1966年の提携以降、日野を支援してきたが、20年以上にわたって不正を続けた日野の企業体質を変えるのは難しく、「商用車ビジネスで日野を支えていくのは…

残り543文字(全文1343文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

4月30日・5月7日合併号

崖っぷち中国14 今年は3%成長も。コロナ失政と産業高度化に失敗した習近平■柯隆17 米中スマホ競争 アップル販売24%減 ファーウェイがシェア逆転■高口康太18 習近平体制 「経済司令塔」不在の危うさ 側近は忖度と忠誠合戦に終始■斎藤尚登20 国潮熱 コスメやスマホの国産品販売増 排外主義を強め「 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事