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投資・運用 日本株 沸騰前夜

インタビュー「資本コスト意識の経営を徹底」鉢村剛・伊藤忠商事副社長CFO

 ウォーレン・バフェット氏が注目する総合商社株。構造改革への取り組みをCFO(最高財務責任者)に聞いた。(聞き手=浜田健太郎/和田肇・編集部)

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── 伊藤忠の業績は過去30年間で大きく伸びた。その要因は。

■2010年4月に岡藤(正広会長・最高経営責任者)が社長に就任し、当社はそれ以前とは明らかに経営が変わった。世界の実質経済成長率は、00年4.5%、15年3.1%、22年2.9%(いずれも世銀調べ)と推移した中、当社の10年度から22年度までの当期純利益の年平均成長率は14%。私がCFOに就任した15年度から22年度で19%だ。この間に中国の経済成長があったとはいえ、これだけ利益水準を上げてきたのは、外部要因だけではなく、経営管理の手法が向上した内部要因が大きい。

70事業に「最低要求利回り」

── 商社経営では、投融資の審査、判断が最重要のプロセスだ。

■企業経営に求められる株主資本コストは当然意識する。ただ、レベル感は、事業分野によって違う。総合商社であるにもかかわらず、リターンが高い分野だけを狙っていたら、会社の「体格」がどんどん小さくなってしまう。このため、各事業分野で、稼げる範囲で稼いでもらう狙いで、一律の投資基準を10年に廃止した。投資のハードル・レート(最低限求められる利回り)を引き下げたカンパニーがある。金属、機械、化学品、建設の4カンパニーは、収益貢献の劣る懸念分野だったので、より細かな基準を適用し、再生した。

── 投資の選別にはどのような指標を用いているのか。

■投資基準自体は、ネット・プレゼント・バリュー(正味現在価値=投資案件から将来得られるキャッシュフローの現在価値と、投資金額の現在価値の差)を使っている。前提の投資金額はWACC(株主資本と借入金のコストの加重平均)に基づいて、ハードル・レートを計算する。一律基準に代え、事業により30~40程度のハードル・レートを10年代半ばに設定した。いまは約70ある。これは日本国内のことで、海外案件は対象国のリスクに応じてレートを変える。これらを全てまとめて、最終的に株主資本コストを上回るリターンを達成すればよいという考え方だ。

 当社は、10年から22年までに6兆3000億円の新規投資を行った。私は、経営会議に投融資案件を上げる投融資委員長を務めているが、ここでの議論は非常にハードルが高い。簡単には通さないので、各カンパニーは事業計画の精度を高めて案件を持ってくるようになった。投資実行後のレビューも毎年行い、収益性が上がらない投資案件にはエグジット(出口)基準を設けている。

── 総合商社の中では、純利益額に占める資源事業の割合が22年度で27%と低い。

■00年代半ばから10年前後までは中国をはじめ新興国経済の急成長に伴い資源バブルが起きた。その当時、当社でも利益に占める資源分野の割合が4~5割を占めていた。ただ、新規の鉱区や初めて組むパートナーとの資源開発はおおむね失敗した。いまでも収益に貢献している資源関連事業は、以前から保有していた権益を拡張したものが多い。価格や景気の変動に収益が大きく左右される資源系の事業は、当社がハンズオン(直接関与)でできることが限られている。10年以降は自らが関与できる非資源系のビジネスに注力してきて、成果が表れている。

── 総合商社は、あらゆる事業分野に手を出すという印象があったが。

■リスクに挑む意欲が非常に高いし、ありとあらゆることをやっていて、損失を出していた時代が、90年代から00年にかけてあった。実際、99年度に当社…

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