総会での株主提案が過去最高に 経営戦略への注文が増加傾向(編集部)
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今年の株主総会はアクティビスト、機関投資家などからの株主提案が過去最高になる見込みだ。
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今年の株主総会は、アクティビスト(モノ言う投資家)も含めた株主提案が活発に行われた年といえるだろう。大和総研の調べによると、5月末時点で株主提案が行われた企業数は82社(315議案)、うちアクティビストを含む機関投資家の提案があった企業44社といずれも過去最高を記録している。気候変動問題に関する提案も7社(過去最高)に上っている。アクティビストや機関投資家などによる株主提案は、年々増加している傾向は変わっていない(表1)。
大和総研や三菱UFJ信託銀行によると、アクティビスト(表2)による提案、議決権行使が活発になっている背景は、そもそも日本の株主総会の制度が、株主提案を行いやすい仕組みになっていることに加えて、①投資家やアナリストなどの視点から、明らかな問題点に対して経営陣が対処していない企業が多いこと、②東京証券取引所の市場区分再編に伴い、PBR(株価純資産倍率)1倍割れの企業に対して、東証から改善要請が出されていること、③著名投資家ウォーレン・バフェット氏による日本企業への積極的投資行動の影響──などが挙げられている。一方、今年の機関投資家による議決権行使基準の変更の主なポイントは、女性取締役の選任(または一定比率以上の選任)、温室効果ガス排出量に関する説明責任、政策保有株式(企業間持ち合い株式)に関する事項などだ(大和総研調べ)。
トップ人事賛成率が低下
大和総研によると、6月の株主総会の注目議案は、不祥事関連では、電力カルテル・顧客情報不正閲覧問題、東京オリンピック・パラリンピック汚職問題、検査不正問題、新型コロナワクチン接種不正請求問題など。取締役選任関連は、建設T社(アクティビストYFOによる取締役選任提案)、石油・石炭製品C社(同村上グループによる社外取締役選任提案)、機械F社(創業家元会長による取締役選任提案)、機械N社(アクティビスト・アセットバリューインベスターズによる取締役選任含む提案)などがあり、同じくアクティビストのオアシスマネジメントは、パルプ・紙H社と建設K社に対して、社長再任反対キャンペーンを行っている。気候変動問題に関する株主提案も増加しており、環境NGOや機関投資家、デンマークの年金基金などが、銀行、卸売り、電気・ガス会社、輸送機器会社などに対して、気候変動の情報開示や定款変更の提案を行っている。
今年3月の株主総会時点でのアクティビストによる株主提案は、JT、鳥居薬品、東亜合成、東計電算、トライアイズ、荏原実業、遠藤製作所、ナガホリの8社で行われ、全て否決されている(三菱UFJ信託銀行調べ)。
公表された資料によると、このうちJTは、子会社への天下り禁止、子会社との資金貸借の禁止、2500億円を上…
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週刊エコノミスト
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