国際・政治

中国が10カ月ぶり利下げ 続く不動産不況 斎藤尚登

 中国人民銀行は6月20日、銀行貸出金利の参照レートのLPR1年物金利を0.1%引き下げて3.55%に、住宅ローン金利の参照レートであるLPR5年物金利も0.1%引き下げて4.2%とした。事実上の政策金利に当たり、利下げは2022年8月20日以来、10カ月ぶりである。

 利下げの背景は、景気が当局の想定以上に減速しているからだ。若年層の失業率は過去最高を記録し、節約志向の高まりが消費の抑制要因となっている。1〜5月の固定資産投資は前年同期比4.0%増に減速した。特に不動産開発投資は同7.2%減に落ち込み、昨年来の不動産不況が続いている。小幅な利下げとなったのは、キャピタルフライト(資本逃避)を加速させかねない急速な元安を回避するためであろう。しかし、マーケットは利下げを中国経済の弱さの象徴と捉え、元安と株安が同時に進む局面があった。

 今後については、7月末に中国共産党政治局会議が開催され、下半期の経済政策の重点を決定するとみられる。これを機に、あるいはその前にも景気テコ入れ策が発表される可能性が高い。具体的には、インフラ投資の増強のほか、住宅購入刺激策の発動、さらには補助金支給などによる消費刺激策の実施などもあり得る。しかし、インフラ投資の投資収益率は低下しているし、住宅投資・投機をあおれば住宅バブルは膨張する。期限付きの消費刺激策は需要の先食いに他ならない。旧態依然の景気テコ入れ策では短期的な効果は期待できても、中長期的には多くを期待することはできない。

民営優遇がカギ

 景気本格回復の成否のカギを握るのは民営企業への「優遇」策の発動の有無である。現状は政策の恩恵が国有企業に集中し、民営企業が蚊帳の外に置かれる「国進民退」という状況にある。しかし、習近平国家主席いわく、「民営経済は税収の5割以上、GDP(国内総生産)の6割以上、技術革新の7割以上、都市部雇用の8割以上、企業数の…

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週刊エコノミスト

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