経済・企業

“ゼロゼロ融資”で過剰債務の企業に金融機関は寄り添えるか 坂田芳博

大勢の観光客らでにぎわう大阪・道頓堀。コロナ禍からの回復は進むが、取り残された企業の倒産も目立つ(5月8日)
大勢の観光客らでにぎわう大阪・道頓堀。コロナ禍からの回復は進むが、取り残された企業の倒産も目立つ(5月8日)

 ゼロゼロ融資の返済は今夏にはピークを迎えるとみられる。業績回復が遅れた企業には過剰債務となり、対応する金融機関の姿勢が問われている。

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 新型コロナウイルスの感染拡大で経済活動が停滞した2020年。企業倒産の大幅増が懸念されたが、実際には歴史的な低水準をたどることになった。政府や自治体による緊急避難的な資金繰り支援策の一つである「実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)」が中小企業の資金繰り緩和に劇的な効果をみせたためだ。

 ゼロゼロ融資は20年3月から政府系金融機関、5月からは民間金融機関で受け付けた。「とにかく資金を貸し出すように」との政府の大号令で、通常なら資金調達が難しい企業でも融資を受けることができた。

 だが、時間の経過とともに企業の資金繰り支援の効果は薄れている。特に、業績回復の遅れた企業には、ゼロゼロ融資などコロナ禍の支援策の副作用でもある「過剰債務」が重くのしかかっている。

14カ月連続で増える企業倒産

 過剰債務問題は、多くの中小企業にとって差し迫った問題になっている。過剰債務で新たな資金調達ができない企業は増え続け、企業倒産は23年5月まで14カ月連続で前年同月を上回っている。

 背景には22年から続くロシアのウクライナ侵攻や円安など、想定外の事態がある。原材料や資材価格、エネルギー価格の上昇で企業業績は二極化が進み、経済活動再開で人手不足も顕在化してきた。

 ゼロゼロ融資は今年、最長3年間という利子補給の期間を終え、元金と利子の返済が始まる。夏には返済企業の数がピークとなる見込みだ。そこで今、コロナ禍からの業績回復が遅れ、過剰債務を抱えながら返済原資の捻出が難しい中小・零細企業への対応が注目されている。ゼロゼロ融資の返済が難しい企業は、金融機関へのリスケ(返済の繰り延べや借り入れ条件の変更)要請だけでなく、事業継続を断念して債務整理を弁護士に一任するケースが目立つ。

倒産が増えたのに引当金を減らす銀行が増えた事情

 東京商工リサーチが23年4月に実施した「新型コロナウイルスに関するアンケート」調査では、コロナの企業活動への影響について、「すでに収束した」と回答した企業が35.7%と、20年8月の調査以来、最高を記録した。すでにアフターコロナに向けた経済活動は新たな局面に入っているといえる。だが、その一方で取り残された企業のコロナ禍は続いている。事業継続か廃業かの決断が目前に迫り、倒産も現実味を帯びている。

 地方銀行99行の23年3月期の貸出金残高は計303兆8521億円(前年比4.5%増)で、11年3月期から13年連続で伸びている。一方、同期の貸し倒れ引当金は計2兆16億円(同2.2%減)と、5年ぶりに減少した。

 各地銀は、コロナ禍に入った20年3月期から貸し倒れ引当金を積み増した。監督する金融庁が将来を見据えて貸し倒れ引当金を見積もる「フォワードルッキングな引き当て」を推進したことも背景にある。コロナ禍の収束が見えない時期は、保守的かつ予防的に貸し倒れ引当金を計上する銀行も多く、21年3月期は81行(全体の81.0%)…

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週刊エコノミスト

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