金融緩和の修正で“悪い円安”回避こそ急務 長谷川克之
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早期に金融政策の変更か、時期尚早か──。インフレが高進する中、日銀の「次の一手」について、長谷川克之・東京女子大学特任教授と片岡剛士・Pwcコンサルティングチーフエコノミストの論客2人に語ってもらった。(聞き手=浜條元保/中西拓司・編集部)
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日銀は過去三十数年間のグローバリゼーションからの大きな転換に伴う物価環境を巡る構造変化を直視し、機動的な金融政策の修正に動く時期に来ている。10年前に黒田東彦前総裁が始めた異次元緩和の環境からは大きく変わった。コロナ後の回復やウクライナ戦争の影響も加わり、日本でもモノやサービス価格の上昇が広がり、足元では3〜4%という物価上昇が定着しつつある。
背景には、経済効率性を最優先する経営の見直しがある。企業は経営効率を高めるために世界中にサプライチェーン(供給網)を構築したが、米中対立やウクライナ戦争で世界が分断。友好国や国内に新たなサプライチェーンの再構築を余儀なくされている。また、人権への配慮や気候変動対策もコストアップ要因となり得る。
日銀には、過去にゼロ金利や量的緩和の解除に失敗したトラウマがあるかもしれない。今回も安定的な2%の物価目標の達成に確信が持てず、さらに今後、米中経済の失速など外的リスクを踏まえて、慎重になっているのだろう。だが、環境が急変すれば再び緩和政策に戻ればいい。
過度な円安を回避するためにも機動的な修正が急務だ。米国のように後手を踏んで、急激な利上げになれば、内外の経済や金融市場に大きなショックを与えかねない。主要国で唯一、緩和を続けている円がグローバルな金融市場において流動性を供給する役割を果たしているからだ。このリスクに関しては、国際通貨基金(IMF)も指摘している。イールドカーブ・コントロール(YCC)は早期に見直しをすべきだ。
問われる日銀総裁の胆力
海外経済のリスク要因に配慮して緩和修正ができないなら、ずっと不可能だろう。経済が回復し物価が目標を超えてくれば、緩和を縮小して、次の緩和余地を日銀も作るべきだ。それが金融政策の自由度を高める。また、YCCが債券市場の機…
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週刊エコノミスト
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