年末の長期金利予想は米国3.25%、日本0.5% 岩下真理
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昨春以降の複合インフレの要因は、①コロナ禍、②気候変動対応、③ウクライナ戦争の三つだ。
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米国では①の供給制約は落ち着いたが、人手不足は解消せず、サービス価格の粘着性は続いている。②はエネルギー価格、農産物やメタルの価格は下落しても、コロナ前水準より高止まりしている。足元ではエルニーニョ現象の発生予測で、天候不順による農産物価格の上昇が再び懸念される。③は停戦合意がすぐに実現するとは考えにくい。西側諸国のロシアへの経済制裁は続き、米中対立のもと貿易の分断化、国家安全保障は、財政インフレとなり得る。インフレとの闘いはまだ続いている。
6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、予想通り利上げが見送られた。全会一致という点が、パウエル議長の統率力の強さを物語る。
FOMCメンバーが政策金利を予想する「ドットチャート」では2023年末の中央値が5.625%となり、年内あと0.25%の2回の利上げの可能性を示唆した。市場はタカ派と受け止めたが、パウエル議長の「スキップではない」「7月会合はライブだ」という発言からは、景気と物価の両にらみで、データ次第の構えだ。インフレ率は25年にやっと2%に近づく姿で、早期の利下げは想定していない。
その一方で、23~24年の成長率は1%程度が続く見通しで、信用不安が高まった3カ月前より、ソフトランディング(軟着陸)できる可能性が高くなったこと、米連邦準備制度理事会(FRB)は情勢を見極める余裕ができたことがうかがえる。
それでも24年11月の米大統領選挙が視野に入り、金融政策運営はこれまでのインフレ抑制から、景気後退への配慮に軸足を移していくだろう。米国は利上げの最終局面にあり、来春には利下げ開始を予想する。タカ派姿勢を残しつつ政策金利を高止まりさせることから、23年末の米10年金利は3.50%程度、利下げ開始…
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週刊エコノミスト
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