インフレ対策の投資先としてJ-REITに妙味 関大介
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J-REIT(日本版不動産投資信託)価格の出遅れ感が強くなっている。株式市場では日経平均株価が年初来30%近く上昇し33年ぶりの高値を更新する動きが続く中、代表的な指数である東証REIT指数は年初と同様の水準で推移している(図1)。
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上昇しない要因として、以下の2点が挙げられる。①米国長期金利上昇の影響、②オフィス系銘柄の価格停滞──だ。
①利回り投資商品のJ-REITにとって、米国債利回りが大幅に上昇した状況がマイナス要因となっている。市場での売買金額の半分以上を占める外国人投資家は、J-REIT投資拡大に向かいにくいためだ。2022年に東証REIT指数が2000ポイントを割り込んだ要因は、米国10年債利回りが3.5%を超える水準になったことだった。従って米国10年債利回りの低下傾向が続く状況にならない限り、J-REIT価格の上昇は難しい。
②東証REIT指数は時価総額ベースで算出されているため、時価総額が大きい銘柄の多いオフィス系の影響を受けやすい。米国10年債利回りは、23年2月初頭の4%を超える水準からは低下しているため、収益安定性の高い物流系や住居系の価格はオフィス系と比較すれば回復している。
一方でオフィス系は、収益の先行きに対する懸念が続いている。東京都心部では、23年と25年に大規模オフィスビルの供給が予定されているためだ。さらに価格上昇に必須な外国人投資家は、米国で在宅勤務の進展を受けて、オフィス空室率が高い状態になっていることで、オフィス系への投資を回避していると考えられる。
ただし、今後のインフレ対策として投資を検討するのであれば、出遅れ感が強いJ-REITのオフィス系は有望だろう。景気拡大に伴うインフレとなった場合、オフィスビル賃料の引き上げは他の用途と比較して容易だからだ。
また、株式市場に上場している不動産会…
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週刊エコノミスト
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