経産省の半導体戦略にスピード感 2030年の売り上げ目標は15兆円 若林秀樹
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今度の半導体国家戦略はスピードも規模も以前とは別物だ。国際連携も期待できる。
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経済産業省が6月、先端技術強化に国家戦略となる「半導体・デジタル産業戦略(改定版)」を発表した。従来、日本政府の半導体戦略は、「遅い、小出し、絵に描いた餅」と散々な評判だったが、今回は違う。台湾積体電路製造(TSMC)を熊本県菊陽町、茨城県つくば市へそれぞれ誘致したことに続き、矢継ぎ早に手を打っている。
具体的には、「技術研究組合最先端半導体技術センター(LSTC)」を2022年12月に設立。次世代半導体の国産化を目指すラピダス(東京都千代田区)も昨年8月に発足設立。米IBM、ベルギーの先端技術研究機関imecと提携、ラピダスの工場着工(北海道千歳市、今年9月)などを次々と決定した。
数千億円以上の予算の確保だけでなく、工場建設や人員確保など実装が進んでおり、欧米から驚きの声が上がっているようだ。筆者は、2021年から経産省が主催する「半導体・デジタル産業戦略検討会議」に、これまで、9回全て出席しているが、メンバーも、当初の慎重なムードから、最後で最大の機会に全力で応援しようという機運になっている。
改定版の目玉は、30年の半導体関連の売り上げ目標が15兆円(20年約5兆円)と明示され、これまで一くくりだった戦略は分野別に行程表が示されたことだろう。先端ロジック、先端メモリー、パワー半導体など産業用(先端スペシャリティ)、先端パッケージ、製造装置・部材の5分野を挙げている。
投資は11兆円以上
ここに、官民で合計5兆円以上、次世代半導体や、NTTが推進する次世代通信ネットワークの中核技術の「光電融合」の研究開発や社会実装で6兆円以上、合計11兆円以上を投じる。前者はラピダスが主だが、メモリーなどもある。従来は技術開発が中心だったNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の資金を、工場建設など社会実装にも使う点が英断である。
ラピダスは、NEDOのポスト5G(第5世代移動通信システム)基金から、初年度700億円、新工場に2600億円が投じられる。LSTCに投じる数千億円もこれに関係してくる。
先端ロジックは、順を踏んで開発する。第1段階が国内製造拠点整備…
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週刊エコノミスト
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