“AI時代の覇者”エヌビディア 高い並列計算能力で快進撃 吉川明日論
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半導体企業で初めて時価総額1兆ドルを超えた米NVIDIA(エヌビディア)。共同創業者ジェンスン・フアン氏の先見の明が成功をもたらした。
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米NVIDIA(エヌビディア)が、5月末に半導体企業としては初めて株式時価総額が1兆ドル(約140兆円)を超え、テック産業のみならず、多方面から注目される存在になった。
同社は1993年にカリフォルニア州シリコンバレーで設立。創業から30年を超えた、テック産業では老舗といえる企業である。エヌビディアがなぜいま注目を集めるのか。それは、同社が供給するGPU(画像処理プロセッサー)が、チャットGPTに代表される「生成AI」(画像、文章、音声、プログラムコードなどを生み出す人工知能)の開発現場において必須のデバイスであるからだ。エヌビディアは、AI用のGPUで世界シェア8割以上。“AI時代の覇者”である。
同社共同創業者で現在もCEO(最高経営責任者)を務めるジェンスン・フアン氏はいま半導体業界で最も影響力を持つ人物の一人。トレードマークの黒い革ジャンに身を包んだフアン氏は、コンピューター見本市等での講演で、映画スターのような扱いを受ける。
従来、AIは産業機器や医療、ナノテクなどの研究開発者のツールであったが、マイクロソフトが出資する米企業のオープンAIが昨年末にチャットGPTを発表して以来、様相が変わった。いくつかの単語を入力するだけで、人が話すような自然な文章を生み出すチャットGPTは、AIを誰でも利用できる道具に変え、生成AIは個人・ビジネスを問わずその能力を多くの分野で発揮することになった。
チャットGPTは、多数のGPUが実装されたクラウドサーバーを通じて、文章の生成サービス機能を提供。爆発的な利用拡大と並行して、エヌビディアのAI半導体の需要に火が付いた。
エヌビディアはチップの生産パートナーの…
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週刊エコノミスト
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