国策半導体メーカー「ラピダス」のどこが“売り”なのか 服部毅
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日の丸半導体復活を目指す国策会社「ラピダス」が注目を浴びているが、その戦略には疑問が多い。本当に世界で戦えるビジネスモデルなのか。
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経済産業省は、2022年11月、日本の次世代半導体の設計・製造基盤確立に向けたプロジェクト体制を公表した。先端集積回路設計、製造装置・素材の研究開発拠点として国立大学や国立研究所を核にした「技術研究組合最先端半導体技術センター(LSTC)」と最先端半導体製造会社「ラピダス」の2本立てとし、両者は互いを相互補完する関係にある。
日本は先端半導体開発・製造で海外の先進企業に20年の後れを取っているため、ラピダスは米IBMから2ナノメートル(ナノは10億分の1)プロセスに関するライセンスを買うとともに社員を米国へ派遣して技術習得を始めている。一方、ベルギーの先端半導体研究受託企業imecのコアメンバーになって、先端半導体製造に必須の解像度の高い極端紫外線(EUV)露光技術の指導を仰ぐという。
AIで設計効率化
ラピダス社長の小池淳義氏は、去る5月にベルギーで開催されたimecのイベントで、自社の戦略を初めて明らかにした。まず「ラピダスは自分と東哲郎氏と12人の“侍”(個人株主)とで設立した2ナノメートル以降のプロセスに対応するロジックファウンドリー(ロジック系半導体の受託生産)で、日本を代表する8社が73億円を出資している」と説明し、「既に日本政府より3300億円の出資を受けている」と強調した。ラピダスの売り物は、少量多品種の半導体チップを受託生産し、社名が表しているように迅速なビジネスを売り物にするという。
半導体事業は、もともとは製品企画から設計・製造・実装(組み立て、最終検査)までを社内で行う垂直統合型(IDM)が主流であった。1980年代に世界を制覇していた頃の日本の半導体メーカーはすべてこのモデルだった。80年代後半に、設計と製造を分離独立させた水平分業のファブレス(設計専業)・ファウンドリー(受託生産)モデルが登場したことが、現在の半導体産業の繁栄をもたらした。世界最大のファウンドリー台湾TSMCは87年に誕生した。
これに対してラピダスは、顧客が半導体製品企画を立てるだけで、後は設計から製造・実装に至るまで一括して受託する新たなビジネス形態をとるという。小池氏によると、設計・製造・実装間の壁を…
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週刊エコノミスト
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