住宅・建築物に14兆円 戸建てやビルで省エネ・創エネ 榎本恭平/猪股未来
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GX基本方針では住宅・建築物分野に今後10年間で14兆円の投資を見込み、カーボンニュートラル達成のカギを握っている。
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日本がカーボンニュートラルの達成を目指すにあたっては、「住宅・建築物分野の脱炭素化がカギを握る」といっても過言ではない。2050年カーボンニュートラル宣言を受け、政府が21年に閣議決定した地球温暖化対策計画において、住宅・建築物分野に該当する「業務その他」「家庭」部門の温室効果ガス(GHG)削減率目標はそれぞれ51%、66%に設定されており、これは全体目標(46%削減)を上回る水準である。
政府が新たに今年策定した「GX経済移行債」を活用した規制・支援一体型投資促進策「GX基本方針」においても、住宅・建築物の抜本的な省エネを実現するため、今後10年で建築物省エネ法などによる規制の対象範囲拡大・強化を実施していくとされており、住宅・建築物分野の脱炭素化の推進に拍車がかかっている。
具体的には、30年度までに新築住宅・建築物でZEH(ゼッチ=「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」の略)・ZEB(ゼブ=「ネット・ゼロ・エネルギー・ビル」の略)水準の省エネ性能を確保し、50年度までに既存の住宅・建築物の全平均でZEH、ZEB水準の省エネ性能確保が目標とされている。
では、ZEH、ZEBとはどのようなものか。
ZEHは、使う電気を減らしつつ(省エネ)、太陽光発電などのように二酸化炭素(CO₂)を排出しない発電システムを用いて自らも電気を作り(創エネ)、結果的に外から電気を買う量をゼロにした住宅である(図1)。高効率空調・給湯や蓄電システム、太陽光発電、高断熱窓などを備えている。また、こうした取り組みをビルや病院など、建築物で実現したものをZEBという。
ZEH、ZEBの普及拡大は、住宅・建築物分野のGHG排出量削減、ひいてはカーボンニュートラルの実現に寄与する。具体的には、新築の住宅で現行の省エネ基準から20%、ビルなどの建築物で30〜40%(小規模は20%)削減する目標である。ZEH、ZEBの導入はカーボンニュートラルの実現に資するだけではない。資源エネルギー庁は、ZEHについて次のようなメリットを挙げる。
新築戸建てのZEH化率は18.5%
まずは経済性だ。高い断熱性能や高効率設備の利用により、月々の光熱費を安く抑えられる。…
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週刊エコノミスト
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