カーボンリサイクル燃料に3兆円 水素の製造コストが課題 稲垣彰徳
有料記事
GX基本方針ではカーボンリサイクル燃料に今後10年間で3兆円の投資を見込む。その柱となるのが合成燃料やSAF(持続可能な航空燃料)だ。
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合成燃料とは、水素と二酸化炭素(CO₂)を合成して製造される燃料の総称である。合成燃料は、ガソリン、ディーゼル燃料、ジェット燃料、都市ガス、LPガスなど従来の燃料の代替として利用が検討されている。
原料の一つである水素について、特に再生可能エネルギーの電気による水の電気分解を通じて製造した「グリーン水素」を用いた合成燃料は「e-fuel」と呼ばれている。もう一つの原料であるCO₂は、セメント製造などCO₂排出が大きい工場や火力発電所の排ガスなどから回収して利用するカーボンリサイクルが前提となっている。従来排出されていたCO₂を利用することで、燃料利用の際に排出されるCO₂は、従来と比較して実質的に増加しないという考え方に基づき、カーボンニュートラル実現に向けた手段として期待されている。
合成燃料は、既存の流通網や利用環境を変更することなく使用できる点で大きなメリットがある。特に航空機などの用途では、再生可能エネルギーを利用した電化という選択肢をとることが難しいため、燃料の低炭素化は重要な施策と位置付けられている。航空業界では、Sustainable(持続可能な)、Aviation(航空)、Fuel(燃料)の頭文字を取った「SAF」の利用を積極的に進める方針で、合成燃料はその一つとして位置づけられている。
ENEOSなど開発
一方で、植物や廃棄物を原料としたバイオ燃料も同じメリットを有しており、燃料の選択において合成燃料と競合関係にある。一般的にバイオ燃料の方が合成燃料よりも商用化が進んでおり、従来燃料の代替としての利用が進みつつある。しかしながら、バイオ燃料は原料の確保に制約があり、需要が賄いきれないと見込…
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週刊エコノミスト
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