カーボンプライシング 化石燃料賦課金を導入へ 排出権取引も段階的に施行 清水透
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排出する炭素に価格付けをするカーボンプライシングは、負担が事業者だけでなく広く家計にも及ぶ。
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今年5月に国会で成立したGX推進法では、企業による脱炭素のための先行投資を支援するため、今後10年間で20兆円の脱炭素成長型経済構造移行債(GX経済移行債)を発行することを可能とした。GX経済移行債を2050年までに償還する財源として、政府は化石燃料輸入事業者が化石燃料賦課金(炭素賦課金)を支払う制度を28年度から導入する。
化石燃料輸入事業者は、輸入した石炭や天然ガス、石油といった化石燃料の炭素含有量に応じて、炭素賦課金を課されるようになる(図1)。さらに、発電事業者に対して33年度から特定事業者負担金の導入が予定されている。これは、政府が排出上限を設定し、オークション形式による有償での排出権の割り当て(排出権オークション)を行う制度である。
前提となるのは、政府が今年2月に閣議決定したGX基本方針である。GX基本方針では今後10年間に官民で150兆円超のGX投資を実現し、温室効果ガス排出削減についての国際公約と、産業競争力強化・経済成長を同時に実現する「成長志向型カーボンプライシング(CP)構想」を盛り込んだ。
そもそもCPとは、二酸化炭素(CO₂)排出に対して価格を付ける経済的手法である。大きく分けて、炭素税と排出量取引がある。炭素税は、気候変動の要因となる化石燃料の燃焼に伴うCO₂の大気中への排出に対して課される税である。今回導入される炭素賦課金もその類型の一つといえる。
一方の排出量取引には、「キャップ・アンド・トレード型」と「ベースライン・アンド・クレジット型」がある。キャップ・アンド・トレード型は、政府がCO₂排出部門に対して制度上の排出上限(キャップ)を設定した上で、各事業者に対して排出を可能とする権利を無償や有償で割り当て、これを市場で取引可能とするものである。
また、ベースライン・アンド・クレジット型は、排出者が特定の水準よりも排出量を削減できたことを評価し、これをクレジットとして取引するものである。33年に予定される発電事業者への排出権オークションは前者、排出量取引「GX-ETS」は後者となる。
負担は今後の設計次第
こうした手法を用いて、政府は「先行投資支援」と「排出削減を促進する措置(賦課金と排出量取引制度)」を両輪として、GX投資を加速化する。CP導入により得られる将来の財源を裏付けとしてGX経済移行債を23年度から発行し、大胆な先行投資を支援する。CPはただちに導入するのではなく、排出削減に取り組む期間を設けた上、最初は低い負担で導入し、徐々に引き上げる。
炭素賦課金と排出権オークションの詳細な制度設計を巡る議論は、これから本格化する。28年度から導入される炭素賦課金は、22年度の石油石炭税収からの減少…
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週刊エコノミスト
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