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コロナ後の中国を襲う“内憂” 雇用悪化と不動産低迷 西浜徹

上海の空港でタクシーを待つ観光客。夏休み中、各観光地はにぎわったが経済指標は軟調な展開となっている(2023年7月11日) Bloomberg
上海の空港でタクシーを待つ観光客。夏休み中、各観光地はにぎわったが経済指標は軟調な展開となっている(2023年7月11日) Bloomberg

 世界経済をけん引してきた中国経済だが、コロナ後は失速リスクが高まっている。

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 中国経済を巡っては、昨年末以降に当局がゼロコロナ戦略の終了にかじを切ったことを受け、景気の底入れが進むことが期待された。事実、年明け直後は一年で最も人が移動する春節連休に加え、コロナ禍による繰り越し需要も重なり、ゼロコロナの長期化を受けて疲弊した景気は一転、底入れの動きを強めた。1〜3月の実質GDP(国内総生産)成長率も前期比年率ベースでプラス9.1%増と大幅なプラス成長になったと試算されるなど、景気は大きく底入れしていることが確認された。

 しかし、長期にわたるゼロコロナの影響で若年層を中心とする雇用環境は悪化しているうえ、ゼロコロナ終了後も雇用を取り巻く環境は厳しい状況が続いている。さらに、雇用環境の悪化を受けて不動産需要は弱含む推移が続き、不動産価格の低迷が逆資産効果を引き起こし、値上がりを期待して購入した家計部門の財布のひもを固くしており、結果的に需要を冷え込ませる悪循環に陥っている。ゼロコロナ終了による経済活動の正常化を受けて、富裕層や中間層などは繰り越し需要を活発化させている一方、多くの家計は貯蓄志向を強めるなど対照的な動きをみせており、全体としてみた家計消費は弱含む事態を招いている。

 また、中国経済を巡ってはここ数年、過剰債務を巡る問題に度々注目が集まる動きがみられるが、中でも不動産セクターは自己資本に対する借入金の割合を示す「レバレッジ比率」が極めて高い分野だ。不動産価格の低迷は関連セクターの資金繰りに悪影響を与えているほか、建設需要の低迷も景気の足かせとなっている。中国経済にとって不動産投資はGDPの2割強に相当するとみられるなど、近年の高成長を実現するけん引役となってきたものの、その低迷は幅広く景気の足を引っ張ることにつながっている。

中国リスクを欧米警戒

 他方、過去の中国の景気回復においては、外需の回復がけん引役となる動きがみられた。しかし、ここ数年の米中摩擦に加え、コロナ禍やウクライナ情勢の悪化を受けたデリスキング(リスク低減)を目的とする世界的なサプライチェーンの見直しの動きは、中国国内の生産活動に幅広く悪影響を与える事態となっている。さらに、足元においては物価高と金利高の長期化を受けて、コロナ禍からの世界経済の回復をけん引してきた欧米など主要国景気も頭打ちの様相を強めており、中国経済にとって外需を頼みにした景気回復も難しくなっている。

 このように、内・外需双方で景気の足を引っ張る動きが顕在化していることを受けて、4〜6月の実質GDP成長率は前期比年率プラス3.2%に鈍化したと試算されており、プラス成長を維持しているものの、早くもその息切れが意識される状況にある。

 共産党と政府は、今年3月に開催した全国人民代表大会(全…

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週刊エコノミスト

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