世界最大のオンライン旅行会社 ブッキング・ホールディングス 永井知美
Booking Holdings 予約額は過去最高/88
ブッキング・ホールディングス(以下、ブッキング)は米オンライン旅行会社(OTA)だ。独調査会社スタティスタのデータによれば、2021年売上高で世界最大手だった。
子会社が運営する予約サイトには、宿泊や航空便などの「ブッキング・ドットコム」(本社・オランダ)▽主に北米向けの「プライスライン」(米国)▽アジア太平洋向けの「アゴダ」(シンガポール)▽レンタカーの「レンタルカーズ・ドットコム」(英国)▽レストランの「オープンテーブル」(米国)──などがある。このうちブッキング・ドットコムは22年12月時点で世界220以上の国・地域で2700万軒を超すホテルや民泊など宿泊施設をウェブサイトに登録していた。
買収で規模拡大
22年12月期の国別売上高比率はオランダ79%、米国13%、その他9%。ブッキング・ドットコムの本社がオランダにあることから同国の比率が高くなっている。ブッキング・ドットコム、アゴダ、オープンテーブルなどのサイトは日本語を表示する。
ブッキングの源流は米国人の起業家、ジェイ・ウォーカー氏が1997年に設立した宿泊や航空便の格安予約サイト運営の米プライスライン・ドットコムだ。当時は米マイクロソフトが「エクスペディア」、旅行会社向け予約システムを運営する米セーバーが他社と組んで「トラベロシティ」を始めるなど、OTAが次々と開業していた。
OTAの出現以前から宿泊や航空便の予約システムは存在した。セーバーは元々、米アメリカン航空が60年代に稼働させた予約システムの名称。後に別会社になり、世界中の宿泊、航空便、レンタカー、クルーズ船などの予約ができるサービスを旅行会社に提供するようになった。
90年代半ばに出現したOTAはコストがかかるシステム構築を予約システム運営会社に外注し、ネットユーザーが使いやすいウェブサイトの設計やマーケティングに特化。ホテル、航空会社、クルーズ船運営会社のように重い設備投資や、膨大な数の従業員を抱える必要のないビジネスモデルを築いた。
競争に負けたOTAが経営破綻する中、プライスライン・ドットコムは買収を重ねて顧客基盤を強化した。典型例が05年、欧州最大のホテル予約サイトだったブッキング・ドットコムの買収だ。07年にはアゴダ・ドットコムを買収して成長著しいアジアに本格進出し、欧州の売上高が米国を上回った。10年にはレンタカー予約の英トラベル・ジグソーも買収。ブッキング・ドットコムが中核事業となり、18年に現社名に改称した。
消費者にとってOTAを使うメリットは実店舗に出向くことな…
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週刊エコノミスト
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