米金利の上がりすぎで米景気失速→1ドル=130円の可能性 吉田恒
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日米金利が大きく影響するドル・円相場。米国経済の予想外の好調さが、円安から円高へと反転すると、筆者は予想する。
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7月末の日銀の金融政策決定会合以降、日本の10年債利回り(長期金利)は一時0.6%台後半まで、2014年以来、約9年ぶりの水準まで上昇した。ただ為替相場は日本の金利だけで決まるものではなく、ドル・円相場なら、基本的には日米金利差で決まる。さらに言えば、より影響の大きいのは米金利なので、ドル・円相場は米金利で決まると言っていいだろう。
米金利がドル・円決める
7月末の日銀金融政策決定会合で、0.5%としてきた10年債利回りの上限を超える動きも一定程度は容認することが決まり、これを受けて10年債利回りは8月には0.6%台後半まで上昇し、9月中旬には0.7%台となった。
ところで、同じように10年債利回りが大きく上昇に向かったのは、22年12月の日銀会合の決定後にも見られた。この時の為替相場は1ドル=137円程度から1カ月弱で127円まで約10円ものドル安・円高となった。これに対して今回は、円金利上昇を尻目に、為替相場は8月末までの約1カ月で、1ドル=137円程度から147円まで約10円、今度はドル高・円安へ動くといった具合に、ほとんど正反対の動きとなったわけだ。
これは、日本の金利以上に米金利が大きく上昇した結果、日米金利差はドル優位拡大となったためだろう(図1)。ドル・円相場は、日本の金利だけに反応するのではなく、日米金利差に反応するのが基本である。その意味では、むしろ22年12月以降のドル安・円高の反応が異例だったわけだ。これは、この時の日銀の決定が「サプライズ」だったことに加え、さらなる金融緩和見直し(円金利上昇)も織り込んだことが影響したと考えられる。
7月末の日銀会合後、日本の10年債利回りは上昇したが、これは日銀の政策修正の影響だけでなく、米金利上昇に連れた面が大きかったのではなかったか(図2)。
日本と異なり、10年債利回りの上昇阻止策をとらなかったユーロ圏の場合、ドイツ10年債利回りの値動きは基本的に米10年債利回りと重なって推移してきた。これは、日独など先進国の長期金利は米長期金利の影響を強く受けることを示している。別な言い方をすれば、日独などの長期金利は「世界一の経済大国」である米国の長期金利で、ほとんど決まるということだ。
為替相場は、基本的に金利差で決まる。その金利差、長期金利の場合はかなりの割合、米長期金利に対して、日独などの先進国の長期金利が連動する。ただ、先進国の長期金利が連動する中でも、金利水準は日米独では異なり、足元では高い順に米国>ドイツ>日本。
金利が連動するということは、相対的に高い金利が上がる時にはより大きく上がり、下がる時もより大きく下がる。ということは、長期金利差の方向を決めるのは、相対的に最も高い米長期金利になるだろう。
3月の米銀破綻
そんな米長期金利(10年債利回り)は8月に、この間の高値である22年10月に記録した4.3%を更新するところまで上昇した。この背景には、足元の米景気の予想以上の強さがあっただろう。
足元、7~9月期の米GDP(国内総生産)成長率(前期比年率)について、定評のあるGDP予測モデルであるアトランタ連銀のGDPナウが8月31日に…
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週刊エコノミスト
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