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経済・企業

「物流の2024年問題」が問いかけるもの 大下剛

「物流の2024年問題」は企業に対応を迫っている。写真は宅配便大手のヤマトホールディングスと日本郵政グループが小型荷物の事業協業を発表した2023年6月の記者会見。左からヤマトホールディングスの長尾裕社長、日本郵政の増田寛也社長、日本郵便の衣川和秀社長
「物流の2024年問題」は企業に対応を迫っている。写真は宅配便大手のヤマトホールディングスと日本郵政グループが小型荷物の事業協業を発表した2023年6月の記者会見。左からヤマトホールディングスの長尾裕社長、日本郵政の増田寛也社長、日本郵便の衣川和秀社長

 今年に入り、政治やメディアの世界でも、「物流の2024年問題」が取り上げられる機会が大幅に増えた。ドライバーの時間外労働の上限が年間960時間に制限されることによって、モノを運べない状況が生まれるのではないかという危機感が背景にある。

「物流の2024年問題」が起きた真の原因は、一言で言えば、企業経営にロジスティクス概念が定着していないことにある。

企業経営におけるロジスティクス

 林周二『流通革命』が著されたのは、1962年である。高度経済成長期には、大量生産・大量消費を支える流通革命が唱えられた。モノが不足して、作れば売れる時代において、物流に求められるのは、大量輸送・大量保管の能力向上である。それは技術論・方法論であり、物流に関して戦略は必要とされなかった。

 しかし、石油危機以降の低成長時代になると、マーケットに対応した生産が求められるようになる。適切な商品を、適切な場所に、適切なタイミングで、適切な費用で納品する必要が高まった。市場が求める「適切な商品」を生み出すのがマーケティングだとすれば、それ以降を担うのはロジスティクスである。1980年代後半以降、物流活動に対する効率の追求に加えて、市場適合を含むロジスティクスという概念が普及する。

 しかしながら、現代にいたるまで、本格的にロジスティクスに取り組んだ企業は多くなかったのではないだろうか。競争優位を築くためロジスティクスに積極的に取り組んだ先進的な企業もあった。一方で、多くの企業にとって物流は依然としてコストであり、市場適合ではなかった。それらの企業は、とにかく安く物流活動を委託できる物流業者の選定に力を入れた。物流業界も一部では付加価値の高いサービスを展開しようという企業はあったが、差別化できずコスト面でしか勝負できない企業も少なくなかった。コスト競争に巻き込まれれば、労働集約型である物流業界の人件費は抑制され、長時間労働に陥る。

 企業におけるロジスティクスとは輸送コストを下げたり、保管効率を高めたりすることではない。むしろ、市場適合を行いながら不必要な物流を発生させないのがロジスティクスである。しかし、ロジスティクスという用語を使っていても、多くの場合、それは物流コストの話であり、物流業界への期待は物流活動にかかるコスト削減だったのである。

物流が経営課題の中心に

 トラックドライバー不足は決して最近起こった…

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