躍進テスラ 世界一売れた車モデルY サイバートラック仮予約200万件超 土方細秩子
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電気自動車(EV)大手の米テスラが続々と新車種を発表している。乗用車だけでなく、トラック市場でもシェアを拡大しそうだ。
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世界で最も売れた車はテスラ「モデルY」──。世界162カ国の自動車販売データを集約する情報サイト「フォーカス2ムーブ」が7月、明らかにした。1~5月の間、モデルYの販売台数は42万7524台に上り、トヨタ自動車の「カローラ」(41万732台)を抜いたという。
8月28日付のブルームバーグによれば、新車販売台数に占めるEVの割合が5%を超えた国は23カ国に達した。注目すべきは、脱エンジン車を標榜(ひょうぼう)する欧州だけでなく、米国や東南アジアでもEVの販売台数が急増していることだ。フォーカス2ムーブによれば、モデルYの米国販売台数は1~7月、前年同期比95.4%増となり、車種別で5位に急伸。前年同期は16位だったという。
調査会社のカウンターポイント・テクノロジー・マーケット・リサーチのまとめでは、世界の乗用車販売台数に占めるテスラの割合は4~6月に20%に達した。「自動車大手がEVの製造に乗り出せばテスラのシェアは下がる」という見方があったが、実際にはテスラ、中国EV大手の比亜迪(BYD)、独フォルクスワーゲン・グループの地位が固定化している(図)。
テスラのイーロン・マスク最高経営責任者は突飛な言動で知られ、敬遠する向きもあるが、株式市場の評価は高い。米金融大手モルガン・スタンレーは9月11日、テスラ株の目標株価を250ドルから400ドルに引き上げ、株価は急騰。時価総額は9月下旬、8000億ドル(約120兆円)前後に達し、自動車メーカーで世界一だ。
モルガン・スタンレーはテスラが開発中のスーパーコンピューター「Dojo(ドージョー)」が同社の時価総額を最大5000億ドル高める価値があるとした。テスラはDojoを運転支援システムのデータ処理などに使う予定。他社に開放すれば、同社の企業価値を大幅に高める可能性があるという。
独自充電規格が標準に
飛躍の背景にはこれまでの投資が結果につながっていることが挙げられる。
例えば、テスラが展開する急速充電器の規格が北米で標準になりそうな動きがある。ホンダは9月7日、北米で2025年以降に販売するEVをテスラが提唱する北米充電規格(NACS)に対応する仕様にすると発表した(関連記事)。7月に同様の発表をした日産自動車に続く動きだ。米ゼネラル・モーターズや米フォード・モーターなどもNACSを採用すると決めている。現在、北米では同規格とテスラ以外の自動車メーカーが採用する規格があるが、テスラが提唱する規格で統一されかねない勢いなのだ。
テスラが世界に先駆けて20年に導入した車体製造法「ギガキャスト」にも注目が集まる。トヨタは今年6月、追随すると発表した。いずれテスラの自動車OS(基本ソフト)が標準規格になるという予想もある。
一方、新興メーカーのテスラに自動車を量産するノウハウが乏しいことや、新型モデルの投入が少なく、消費者の期待に応えていないといった指摘があった。
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週刊エコノミスト
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