中国各地の高速道路や空港などで「テスラ進入禁止」 何が起きているのか 高口康太
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今夏、中国各地で電気自動車(EV)大手の米テスラの車に限って道路や施設への進入を禁止する動きが報じられている。何が起きたのか。
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蜜月ぶりで知られてきた中国政府とテスラの間に秋風が吹き始めた──。そんなうわさが広がっている。理由は中国各地で今夏、テスラ車を排除するかのような規制が相次いで報告されているからだ。
科学技術に関する中国のニュースサイト「快科技」は7月7日、山西省の高速道路当局がウェブサイトに載せたとする画像を掲載し、「テスラ車が一部の区間で高速道路への進入を禁止された」と伝えた。画像には、省内の五つの区間でテスラ車の進入を禁止するという当局の説明があり、その一つはこうだ。
「7月5日6時半から、梵王寺料金所入り口ではテスラ車と黄色ナンバープレートを付けたトラックの交通規制を実施する」(黄色ナンバープレートは積載量4.5トン以上の車両用)
なぜテスラ車の通行を規制したのか。記事によれば、山西省高速道路交通警察は捜査が必要な容疑者が乗ったテスラ車がその区間を走っていたことを理由に挙げたという。ただ、大型トラックの通行も規制した理由は分かっていない。
8月14日には中国のニュースサイト「中国交通新聞網」が湖南省岳陽市の三荷空港に掲示されたとする標識の写真を載せた。「機密管制区域 テスラ車進入禁止」と書いてある。記事によれば、8月12日にネットユーザーが投稿したもので、中国交通新聞網が空港当局に取材すると、「テスラ車には所有者が去った後に周囲の環境を記録する特定のモードが搭載されていることが理由」という説明だった。車の盗難やいたずらを防ぐため、不審者が接近すると警告音を出して録画する「セントリーモード」を問題視したという。ただ、中国の高級EVも似た機能を装備する例がある。なぜテスラ車だけが進入禁止になったのかは不明だ。
“走る監視カメラ”
テスラはこの記事が載った8月14日、中国の交流サイト「微博(ウェイボー)」にセントリーモードに関する説明文を載せた。録画データは車内のUSBメモリーに保存しており、同社が遠隔で閲覧することはできないという。また、中国当局が2021年10月に発布した「自動車データ安全管理規定」の草案に基づき、中国で収集したデータは全て中国国内で保存していることも記している。
さらに今年9月3日、ニュースサイト「新黄河」も、「テスラ車が浙江省杭州市の高架道路を通行できなくなっている」とする動画がインターネットで広まっていると伝えた。動画を投稿したネットユーザーはテスラ車が狙い撃ちにされたと訴えたが、新黄河が取材した警察は否定したという。
以上は今年に入って中国のメディアが報じた「テスラたたき」に関するニュースだが、以前から気になる動きはあった。
21年3月19日、ロイターは中国軍当局がテスラ車を所有する関係者に対し、「軍の敷地外に車両を駐車するように通達し、今週通知された」と報じた。テスラ車の搭載カメラにセキュリティー上の懸念があるという。
2カ月後の21年5月、テスラは中国にデータセンターを建設し、「…
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週刊エコノミスト
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