経済・企業

ドイツ国際モーターショーで中国勢が躍進 高塚一

BYDは展示会場では最大級のブースで出展。SUVの「ATTO3」、高級セダン「漢」、小型車「ドルフィン」などを展示 筆者撮影
BYDは展示会場では最大級のブースで出展。SUVの「ATTO3」、高級セダン「漢」、小型車「ドルフィン」などを展示 筆者撮影

 独自動車ショーではBYDはじめ、中国勢の躍進が目立った。シェアはまだ低いが、地元メーカーは警戒感を強めている。

>>特集「EV戦争2023」はこちら

 国際モーターショー「IAAモビリティー」が2023年9月、ドイツ・ミュンヘンで開催された。IAAはもともと、「フランクフルト国際モーターショー」として、1951年からフランクフルトで開催されていたものだ。21年に開催地をミュンヘンに変更、それに合わせ、従来の自動車ショーから「モビリティー(移動手段)のプラットフォーム」という新コンセプトを掲げ、今回が2回目の開催となった。

 21年同様、今回も展示会、カンファレンスに加えて、市民に開かれたイベントを行った。一部環境団体が自動車メーカーや自動車ショーなどに反対する動きに対して、オープンな姿勢を示したものだ。メッセ・ミュンヘン会場は、ビジネス客向けに「IAAサミット」と名付けた展示スペースを設け、入場は有料(1日券で175~220ユーロ)とした。

市内7カ所に屋外会場

 一方で、ミュンヘン市中心部7カ所に設置された屋外会場「IAAオープンスペース」は、誰でも自由に無料で入場可能だった。フォルクスワーゲン(VW)、BMWなどの自動車メーカーが、市民向けに電気自動車(BEV)などを展示したほか、子供が遊べる施設を用意したり、ミニコンサートを開催するなどし、市民が気軽に訪問できる環境を整えた。また、市民が未来のモビリティーの姿を議論するイベントや、EV、電動バイクや自転車に試乗できるコーナーも設けた。ビジネス客向けは平日4日間の開催だったのに対して、オープンスペースは週末も含む6日間開催とし、週末に家族連れでも訪問できる形とした。

 主催者発表によると、今回の出展企業数は671社だった。ドイツの主要自動車メーカーであるBMW、メルセデス・ベンツ、VWのほか、自動車部品大手ボッシュ、シェフラー、コンチネンタルなどの主要自動車部品メーカーも出展した。前回の出展社数は744社だったため、前回の出展社数を下回った。また、前回は新型コロナウイルスの影響を受けたロックダウン直後の開催で、当時、他国からの出展が難しいケースもあったことを考慮すると、実質的には出展社数が伸び悩んだ可能性がある。

 23年の「IAAモビリティー」のテーマは「接続されたモビリティーを体験せよ(Experience Connected Mobility)」。乗用車のデジタル化、ソフトウエアの強化に加えて、電動化、サーキュラーエコノミーなど、自動車産業の最近のトレンドを展示テーマとした企業が多かった。たとえば、ドイツ自動車メーカーでは、BMWが電動化、デジタル化、サーキュラーエコノミーをテーマに、BEV、プラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池車を幅広く展示した。また、BMWの次世代BEVモデル「ノイエクラッセ(Neue Klasse)」を、展示会場、オープンスペースに展示した。「ノイエクラッセ」は2025年からハンガリー・デブレツェン工場、26年からミュンヘン工場で生産開始予定だ。VWは展示会場ではグループとして、VW、アウディ、ポルシェなどを総合的に展示したほか、充電子会社エリ(Elli)の新型充電器も展示した。

 自動車部品メーカーでは、ボッシュがソフトウエア・デファインド・ビークル(SDV)を展示の主テーマにした。SDVとは、車と外部の双方向通信機能を使ってソフトウエアを更新し、販売後も機能を増やしたり性能を高めたりできる自動車を指す。ボッシュは、ハードウエアとソフトウエア両方が提供できる点に同社の強みがあるとした。仏自動車部品大手ヴァレオもSDVを展示の主テーマとした。また、自動車部品大手ZFは、操舵・ブレーキなどに導入すると、走行の柔軟性・安定性・効率性が向上、航続距離が伸びるバイワイヤ技術を…

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