新規会員は2カ月無料!「年末とくとくキャンペーン」実施中です!

経済・企業 知らないとまずいBRICS+6

ファーウェイ5Gスマホ発表で見えた中国5Gの真価 丸川知雄

北京のファーウェイ店舗。5G対応の新機種が人気だという(2023年9月)Bloomberg
北京のファーウェイ店舗。5G対応の新機種が人気だという(2023年9月)Bloomberg

 米国や日本が進めてきた対中ハイテク技術封鎖は失敗だった。技術進歩を共有するメリットを逃す損失を認識すべきだ。

>>特集「知らないとまずいBRICS+6」はこちら

 中国・華為技術(ファーウェイ)の5G(第5世代移動通信システム)対応のスマートフォン「Mate60Pro」が8月29日昼に突然ウェブ上で発売され、世界に驚きの声が広がった。ファーウェイは米国政府の輸出規制の対象となっていたが、ついに米国政府の技術封鎖を乗り越え、5Gスマホが作れるようになったことを示していたからだ。

 ファーウェイは5Gの関連特許で世界トップを走る(図)。それゆえ米国政府によって脅威と見なされ、先端的な米国産の半導体集積回路(IC)を購入できないだけでなく、自社で設計したICを台湾積体電路製造(TSMC)に生産委託することも禁じられた。米国は中国国内で線幅7ナノメートル(ナノは10億分の1)以下のICを作れないようにIC製造設備の輸出も阻止したため、ファーウェイは5Gスマホを作るのに必要な基幹ICをどこからも調達できなくなった。

 2020年に世界のスマホ市場で20%まで拡大していたファーウェイの市場シェアは一気に下落し、21年のファーウェイの売上額は前年より29%も減少していた。ところが、そこに降って湧いたのが今回の新機種発売のニュースである。筆者はこのニュースを広東省深圳市のファーウェイ本社の見学中に聞いた。見学を案内してくれていたファーウェイの若手社員2人にとっても寝耳に水だったようで、非常に興奮していた。

 ファーウェイは米国の技術封鎖によってスマホ事業の大半を手放さざるを得なくなるなどの大打撃を受けた後、中国のスマホ市場で徐々に盛り返し、今年4~6月期にはシェアを13.0%にまで引き上げていた。今回の5Gスマホの発売で復活にさらに弾みがつくだろう。

 中国のナショナリストたちは、この新機種発売によって、中国が米国に勝ったとばかりにはしゃいでいる。ただ、この件はファーウェイにとっては重要であっても、国レベルで見た時により重要なのは、5Gがどれほど普及し、経済社会に対してどれくらいのインパクトを与えているかである。

産業応用で本領発揮

 中国工業情報化省によれば、今年6月時点で中国の5G加入者数は6億7600万人と米国の約5倍、日本の約9倍。5Gの基地局数は今年8月末時点で313万基と、日本の27倍である。もし中国が日米に「勝った」側面があるとするならば、それはむしろ5Gの普及と応用においてである。

 日本と中国のスマホユーザーに対して筆者らが行ったアンケート(中国で22年3月に550人を対象に、日本で23年2月に1200人にそれぞれ実施)でも、中国のユーザーの方が5Gのメリットを強く感じていることが分かった。5Gの契約者に対して満足かどうかを尋ねたところ、中国のユーザーの81%が満足してい…

残り1434文字(全文2634文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)が、今なら2ヶ月0円

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

12月3日号

経済学の現在地16 米国分断解消のカギとなる共感 主流派経済学の課題に重なる■安藤大介18 インタビュー 野中 郁次郎 一橋大学名誉教授 「全身全霊で相手に共感し可能となる暗黙知の共有」20 共同体メカニズム 危機の時代にこそ増す必要性 信頼・利他・互恵・徳で活性化 ■大垣 昌夫23 Q&A [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事