化石燃料の大供給国と大消費国のタッグがBRICSで実現する歴史的意味とは 岩間剛一
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BRICSにサウジアラビア、イラン、UAEという大産油国が新たに加わる。国際石油市場におけるドル支配にも影響が及ぶかもしれない。
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BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)の5カ国による首脳会議が今年8月、南アフリカで開かれ、新たにアルゼンチン、エジプト、エチオピア、イラン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)の新規加盟が決定した。すでに、中国、ブラジルも大産油国としての地位を確立しているが、拡大BRICSに新たに中東産油国が加わったことで、世界の石油生産量の4割超を占める大産油国勢力が誕生することになる。
これまでも、シェール革命により世界最大の産油国となった米国に対抗すべく、サウジアラビアをはじめとしたOPEC(石油輸出国機構)加盟国と、ロシアをはじめとした非OPEC加盟国によるOPECプラスは、世界の石油生産量の47%以上を占め、今年末までサウジは日量100万バレルの独自減産、ロシアは日量30万バレルの石油輸出削減を続け、国際石油市場における需給逼迫(ひっぱく)感の醸成に大きな役割を果たしているが、拡大BRICSの枠組みもOPECプラスに匹敵する国際石油情勢へのインパクトを与える存在に成長する。
石油だけではなく、天然ガスについても、ロシアとイラン、サウジアラビア、UAEがBRICSとして結びつくことによって、より強力な産ガス国勢力が誕生する。ロシアとイランは天然ガス埋蔵量の世界第1位と第2位の座を占め、サウジアラビアとUAEも豊富な天然ガス埋蔵量を誇る。日本はロシアとUAEからLNG(液化天然ガス)を輸入している。ロシアとイランは歴史的にも関係が密接で、ロシアのプーチン大統領は2008年、イラン、カタールとともに天然ガス版OPECの創設を打ち出したこともある。
中、印は「重要顧客」
OPECは原油輸出国の国際カルテルであり、供給者の面だけを持つ。しかし、BRICSは中国、インドという世界第1位、第3位の石油輸入国もメンバーであり、両国ともに21世紀に入ってからの石油消費量の伸びも著しい。これまでの枠組みでは、石油供給者のグループとしてのOPECに対し、石油消費国としては先進国の集まりであるIEA(国際エネルギー機関)が対峙(たいじ)し、日本も含めた欧米先進国を中心とする石油の消費国と途上国である石油の生産国との対話と協調が行われてきた。
しかし、日量1億バレルという世界全体の石油消費の中心が、欧米先進国から新興国・途上国へと代わる状況において、拡大BRICSのもと、新興国・途上国の主導による石油の産消対話が中心となる可能性がでてきた。すでに、中国は国内の石油需要の増加を背景に、石油の安定的な調達を目的にサウジなど中東産油国との関係を強化している。習近平国家主席は昨年12月、サウジを訪問して事実上の国家指導者ムハンマド皇太子と会談し、通信技術や脱炭素の協力強化、中国・人民元建ての石油取引などを表明している。
中国は中東における存在感を強めている。今年3月には中東のライバル同士であ…
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週刊エコノミスト
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