経済・企業

路線バスも運転手不足 各地で運休・減便 金子長武

「深刻な人員不足により既存の便数維持が困難となった」と記してある千葉県市原市の小湊鉄道バス停 筆者撮影
「深刻な人員不足により既存の便数維持が困難となった」と記してある千葉県市原市の小湊鉄道バス停 筆者撮影

 地域住民の足となる路線バスの運転手が足りない。待遇の悪さから人手不足が深刻化し、事業者は営業を縮小せざるを得なくなっている。

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 各地で路線バスを維持するのが難しくなり、運休や減便が続いている。事業者の発表や地元メディアの報道を基に、4月以降の運休や減便を決めた路線バス事業者を表にまとめた。ご覧の通り、北海道から沖縄県まで、大都市も含めて路線バスが急速に退潮している。

 北海道帯広市の十勝バスは8月2日、6路線を運休し、13路線を減便すると発表した。理由は明示していないが、3日付の『十勝毎日新聞』は「運転手不足とコロナ禍による路線バス利用者の減少が要因」と伝えた。沖縄県豊見城市の琉球バス交通は10月5日、那覇市の沖縄バスと共同運行する11路線と、単独運行する2路線を減便すると発表。「新型コロナウイルスの影響により社会を取り巻く環境が大きく変化」と理由を示した。沖縄バスの担当者は「大型2種運転免許を取得するための費用を補助し、県内外で説明会を開いて募集しているが、運転手不足の解消には至っていない」と説明する。

社長が運転するほど不足

 影響は首都圏にも及んでいる。東武バスセントラル(東京都足立区)は9月7日、三郷営業所(埼玉県三郷市)管内の一部路線を減便・運休するとし、その理由を「運行に必要な乗務員の不足」と明示。千葉県市原市の小湊鉄道は「運行に必要な乗務員の確保が困難なため」として多数の路線を運休・減便した。ウェブサイトに6月13日付で載せた案内は5月1日から当面の間、7路線を減便、3路線を運休などとする内容だ。7月3日からは帝京大学ちば総合医療センター(同市)に向かう路線を減便した。東京都東村山市の銀河鉄道に問い合わせると、「社長が自ら朝から晩まで路線バスを運転するほどの人手不足で、取材に応じる余裕がない」と窮状を語った。

 近畿地方では金剛自動車(大阪府富田林市)が9月11日、路線バス事業を廃止すると発表した。乗務員の人手不足や売り上げの低下などの要因があるとし、12月20日付で全15路線の運行を取りやめる。富田林市、太子町、河南町、千早赤阪村(いずれも大阪府)の地域公共交通会議や法定協議会に協議を依頼したとし、他社による運行の継続を目指している。現在、営業地域の一部では他社が運行していない。金剛自動車が撤退することで地域住民によっては通勤、通学、通院の足がなくなる。他社が参入しなければ、死活問題ともいえる事態になる。同社の担当者は筆者の取材に「運転手が足りないので運行を維持できない。バスの運転に必要な大型2種免許を持つ人が減った」と説明した。

大型2種保有者は大幅減

 警察庁の「運転免許統計」によれば、大型2種免許の保有者数は2002年約119万人、12年約103万人、22年約80万人。20年間で32%減、10年間で22%減だ。

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