外国人在留資格の特定技能職種に「運転手」追加へ 人手不足解消につながるか 鈴木智也
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運転手の人手不足は深刻化し、他の職種のように外国人の受け入れが必要となるかもしれない。国土交通省は検討に入った。
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主要メディアは9月中旬、国土交通省がトラック、バス、タクシーの運転手に就ける外国人を拡大する検討に入ったと報じた。具体的には「特定技能」という在留資格の対象職種に運転手を加える案という。
在留資格とは、外国人が日本に滞在するために必要な許可のことで、法務省出入国在留管理庁が認める。ホワイトカラー向けの「技術・人文知識・国際業務」など29種類がある。ただ、自動車の運転手に特化した在留資格はない。
もっとも、国内には本業を運転手とする外国人がいる。それらの人々が働く法的根拠は、①終戦前から日本に住む旧植民地出身者とその子孫である「特別永住者」、②「永住者」「定住者」など就労制限のない在留資格を持つ人、③「特定活動(告示46号)」という在留資格を持つ人(タクシー運転手のみ)──に限られる。
国交省が急ぐ理由
今回、国交省が検討に入ったと報じられたのは、これらとは別の在留資格、特定技能の対象職種を拡大する案だ。国交省は入管庁などと協議し、9月13日付『日本経済新聞』によれば「2023年度中の実現をめざす」。この特定技能については後述する。
今年度中に実現を目指すとは急な話だ。国交省が急ぐ背景には、物流・運送業界が直面する「2024年問題」があるとみてよいだろう。19年4月施行の働き方改革関連法は、時間外労働時間に上限を設けたが、運転手など一部の職種は24年3月末までの5年間、適用を猶予してきた。つまり、同年4月からは運転手の時間外労働は年960時間が上限となり、働ける時間が短くなる。業界全体で輸送能力が低下することから、トラックの無人走行やロボットによる荷降ろしの自動化などに加え、運転手の確保策をこれまで以上に進める必要がある。
しかし、運転手の確保は簡単ではない。過去30年間で物流事業者数は2倍の約6万社に増加した一方、物流量は宅配だけで6倍の約60億個に大きく増えた。人手不足は深刻化し、今年8月の有効求人倍率はタクシー運転手を含む「乗用自動車運転手」の4.25倍を筆頭に全職業の1.23倍を大きく上回っている(図1)。成り手不足から運転手の高齢化も進んだ。
業界団体の全日本トラック協会、日本バス協会、全国ハイヤー・タクシー連合会は20年以降、外国人運転手の導入に向け、政府に働きかけてきた。3団体は足並みをそろえて今年度の事業計画で「特定技能に運転手の追加」を盛り込み、政府に要望した。政府はそれを受ける形で今年6月、トラックが高速道路を走る際の速度規制を時速80キロから引き上げることなどを盛り込んだ「物流革新に向けた政策パッケージ」を閣議決定し、「外国人材の活用に向けて調整を進める」と掲げた。
その一環で国交省は技能…
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週刊エコノミスト
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