インドは4番目の月面着陸成功国 宇宙ビジネスの強化目指す 山田剛
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インドが宇宙開発でも成果を上げている。ビジネスだけでなく、国威発揚の面からも国民の支持を得ている。
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コロナ禍から立ち直り、再び高度経済成長を目指し始めたインドが、宇宙開発でも世界の注目を集めている。8月に日本に先立って月探査船の月面軟着陸に成功。9月には太陽観測船も打ち上げた。今後は金星探査船の打ち上げも予定しており、いよいよ有人宇宙飛行に乗り出す。人工衛星の受託打ち上げやコンサル、衛星画像の販売など宇宙ビジネスの強化を目指すインドには、自国の技術を世界にアピールして「国威発揚」につなげたいという狙いも見えてきた。
「これは歴史的偉業だ。インドの発展を世界にアピールするファンファーレとなった」──。月探査船「チャンドラヤーン3号」で4カ国目の月面軟着陸に成功した8月23日、モディ首相は打ち上げを担ったインド宇宙研究機構(ISRO)のスタッフらにビデオメッセージを送り、労をねぎらった。
1980年に初めて自前のロケットで人工衛星を打ち上げたインドの宇宙開発は日進月歩を重ね、これまでに94回のロケットを打ち上げ(うち失敗は9回)、受託を含めて500個以上の人工衛星を軌道に乗せてきた。
2001年には最大荷重4トンまでの衛星を地上3万6000キロの静止軌道に投入できる大型ロケットGSLVシリーズの打ち上げに成功。08年に初の月探査船「チャンドラヤーン1号」を月の周回軌道に乗せ、13年にはアジア初の火星探査船「マンガルヤーン1号」のミッションも成功させた。
宇宙開発はさまざまな場面で人々の役に立っている。衛星から撮影した精密な地表画像は、防災や農地開発、森林保全などに不可欠なデータ。インド最大財閥タタ・グループの衛星放送事業会社「タタ・プレイ」は、ISROが打ち上げた通信衛星を利用してサービスを行っており、新型衛星「GSAT-24」の利用によって、視聴可能なチャンネル数は今夏に約900へと1.5倍に増えた。
また、16年末にベンガル湾で大型のサイクロンが発生したとき、インド気象局(IMD)はISROの衛星画像を活用して的確な避難命令を出し、1万人以上の生命を救った。
8月に月面に到達したチャンドラヤーン3号は月面探査車を繰り出し、アルミニウムや硫黄、鉄など月面の鉱物を検出。プラズマや月面で起きた地震とみられる揺れも観測した。気温がマイナス170度に下がる月面の「夜」を迎えてスリープモードに切り替えた探査車の再起動には失敗したが、ISROは「予定していたミッションはすべて完了した」としている。
月面軟着陸の余韻が残る9月2日、ISROは…
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週刊エコノミスト
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