インタビュー「コメの力で80億人の食作る」ジュネジャ・レカ・ラジュ亀田製菓会長CEO
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「亀田の柿の種」や「ハッピーターン」などの商品で知られる亀田製菓の会長CEO(最高経営責任者)に昨年就任したインド出身、ジュネジャ・レカ・ラジュ氏に話を聞いた。(聞き手=安藤大介/稲留正英・編集部)
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── 昨年6月に副社長から会長CEOに就任しました。
■CEOになって何か変わるというものではありません。ずっと大事にしてきた言葉は、「人」「イノベーション」「収益」です。ぶれないように、その方針で今もやっています。
── それはどのようなことですか。
■社員がやりがいを感じなかったら、好奇心や行動がなかったら、何も変わりません。お客様が商品を買ってくれなかったら、何も変わりません。ステークホルダー(利害関係者)も人です。人を大切にするということです。
私は技術系の出身でもあり、イノベーションもしくは「変化とイノベーション」という言葉を使っています。未来の食、未来の米菓を想像すると、私たちは今から変化・イノベーションを起こさないと多分、永久に存続するということはないと思います。一方、変化・イノベーションを起こせば、世界中で事業ができると思います。
グルテンフリーのコメはアレルギーの心配がなく、世界中の誰にでも食べてもらえる。しかもおいしい。私たちはこのコメで世界一のイノベーション企業です。「(日本の)1億人じゃなくて、(世界の)80億人の食にしよう」といつも言っています。
最後に収益です。食品業界、特に米菓業界は利益の面で苦しんでいます。価値が消費者に伝わっていないのです。消費者が価値を作るわけですから、そういう視線でモノを作ろうと言っています。素晴らしい商品を作ったら、収益につながるのです。
留学で来日して40年
── インド出身の経営者は世界的に注目されています。
■私も取材が増えています。世界的にはグーグルやマイクロソフトなど、グローバル企業のCEOをインド出身者が務めていることが注目されていますね。
── 活躍の背景とは?
■インドは人口が14億人おり、その中で切磋琢磨(せっさたくま)しているということが大きいのではと思います。アグレッシブでタフでなければ勝ち抜けないということを幼少期から体験しています。私自身もバイオ分野の奨学金を得て、日本に留学したのですが、大変厳しい競争でした。
もう一つの要素は言語力だと思います。インドには30以上の言葉があり、たくさんの言語を学ばなくてはなりません。公用語のヒンディー語と準公用語の英語、地方の言葉と必ず三つは学ばないといけないのです。こうした環境で、粘り強さや適応力、ハングリー精神が必然的に培われていくのだと思います。
── 来日のきっかけは?
■約40年前に大阪大で生物工学を学ぶために留学したことです。当時、インドからの留学先の99%は米国、欧州でした。ただ、私はある先輩から「今からは欧米じゃない。日本が世界一になる」と言われたのです。当時、日本のGDPは世界一をうかがう勢いで、世界の企業時価総額ランキングでも日本企業が上位を占めていた時代です。「メード・イン・ジャパン」の製品は皆が欲しがるものでした。
大阪大、続いて名古屋大で生物工学と農学を学び、「太陽化学」(三重県四日市市)に入社しました。ニワトリの卵や、お茶の成分であるカテキンの研究などをしました。ロート製薬では沖縄のシークワーサー…
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