南インドのカルナータカ音楽 女性に門戸を開き“学校”も開設 井生明
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カーストと結びつき育まれたインドの音楽。時代や社会の変化につれ、その在り方が問われつつある。
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時代の移ろいとともに、確かにインド社会が変わりつつある。繊細なカースト問題について取り上げた映画が増え、日本でも上映されるようになってきているのだ。
「僕の名はパリエルム・ペルマール」「燃えあがる女性記者たち」「響け!情熱のムリダンガム」。この3作品に共通しているのは主人公たちがダリット(ダリト)と呼ばれる不可触民であり、社会的差別や困難に立ち向かうという点である。
インドでは大枠としてバラモン(司祭階級)、クシャトリア(王侯・武士階級)、ヴァイシャ(商人階級)、シュードラ(農民・その他サービス階級)の4階級があるが、ダリットはこの枠外に位置し、浄・不浄の概念から社会的に敬遠される。ここではインドの古典音楽を愛する筆者が映画「響け!情熱のムリダンガム」を通して南インド古典音楽シーンを考察する。
宗教、カーストの二重障壁
ムリダンガムとは、カルナータカ音楽(南インド古典音楽)に必須の横胴の両面太鼓。両サイドに張った牛、水牛、ヤギの革をたたいて音を出す。カルナータカ音楽は芸術音楽としても発達した「ヒンズー教の賛歌」で、主にバラモンと一部の非バラモン音楽カーストにより伝承されてきた。カルナータカ音楽に「不可欠」の楽器が、カースト制度においては枠外で「不可触」とされる人々の手により作られているという事実。これには長い間、光が当てられることはなかった。
この映画の主人公ピーターはムリダンガム職人を父に持つダリット。巨匠がたたくムリダンガムの音色やカルナータカ音楽の素晴らしさに目覚め、プロのムリダンガム奏者を目指す。彼はほれ込んだムリダンガム奏者(後に師匠となる)に入門を願い出るが最初はあっさりと断られる。バラモンと一部の音楽カースト中心のカルナータカ音楽界に…
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週刊エコノミスト
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