インタビュー「イスラエルの“占領と抑圧”を世界が傍観、ガザ地区の暴発は必然」高橋和夫・放送大学名誉教授
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パレスチナ問題をどのように理解すべきか。第一人者に意見を聞いた。(聞き手=浜田健太郎・編集部)
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── パレスチナのガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスによる対イスラエルの大規模攻撃は予想外の出来事だったのか。
■ガザの情勢を長年みていて、状況はほんとうに劣悪だ。圧力釜の蓋(ふた)を閉めたまま火をたき続けたような状況といえばいいか。いつかは暴発するだろうとみていたので、事件発生には驚いていない。ただ、ハマスの攻撃の規模とイスラエル側がそれにまったく対応していなかったことには驚いた。
── ハマスは、完全封鎖されているはずのガザに大量のロケット弾などを持ち込んだ。どこから調達してきたのか。
■イランがハマスに武器を提供してきたのはよく知られている。部品にバラして持ち込みやすくして、ガザを包囲する壁をすり抜けて調達したと想像する。ガザとエジプトの国境のラファ検問所はエジプト人が管理しているが、カネをもらって見逃すことがあったのかもしれない。さらにガザの地下工場で製造した分もあった。
── ヒズボラ(レバノンを拠点とするシーア派組織)などハマス以外の戦闘組織がイスラエルに入ってくる可能性をどうみているか。
■『ニューヨーク・タイムズ』(10月20日付)によると、イスラエル政府の上層部では、これを機にヒズボラに先制攻撃をかけようという議論が強かったけれど、ネタニヤフ首相は米国の反対で何とかとどまっていた。イスラエルを訪問したブリンケン米国務長官とバイデン米大統領が、イスラエル側にヒズボラに対する先制攻撃をやめるよう促したという。ハマスとは比べものにならない軍事組織のヒズボラとイスラエルが戦争を始めたら大変だ。イスラエルを守るために米国が介入する、ヒズボラの支援者であるイランが、それに応戦するという戦争の拡大のシナリオが懸念される。
困難な「2国家解決」
── ガザは「天井のない監獄」といわれ、国際人権団体が「アパルトヘイト状態」だと非難している。
■人口の半分が貧困ライン以下で、国連や支援団体の食糧援助に依存している。失業率が50%近くで、生活がよくなる希望がない。その絶望感が、ハマスに対する支持につながり、ハマスの過激な行動を支えている。
── ガザ地区の住民のハマスに対する認識とは。
■2006年1月にパレスチナ立法評議会で選挙をしたらハマスが過半数の議席を…
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週刊エコノミスト
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