長期上昇トレンド継続の日本株 24年末3万6000円台も 市川雅浩
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今後の日本株を展望するうえでは、企業業績、企業改革、賃金の動向の3点が大きなカギを握る。
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2023年を振り返ると、東京証券取引所の行動が、株式市場に大きな変化をもたらした。東証は3月31日、上場企業に対し、「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」を要請した。これを受けて市場では、企業が株価純資産倍率(PBR)1倍割れの是正に動くとの見方が広がり、特に割安で自社株買いなど株主還元に積極的な企業の株価に注目が集まった。
実際、23年度に入ってからの業種別、株のスタイル別の動きをみると、「割安(バリュー)株」「高配当株」「大型株」「内需株」を選好する様子がうかがえ(表、拡大はこちら)、海外投資家も23年度に入った4月第1週から6月第2週まで11週連続で日本株の現物を買い越し、その額は約6.2兆円に達した。東証の要請はかなり効果があったといえよう。
24年の日本株を展望するに当たっては、「企業業績」「企業改革」「賃金」の3点に注目したい。いずれも改善傾向が確認されれば、日本株は24年に一段高となる可能性が高いとみている。逆に、まったく進展がなければ、海外投資家を中心に大きな失望が広がり、日本株が調整色を強める展開も想定しうる。3点とも改善するか否かは企業次第であり、24年の日本株の方向性は、企業の行動によるところが大きいと考えられる。
企業業績については、市場の関心はすでに24年度の業績に移行しつつあるが、市場が予想する東証株価指数(TOPIX)構成企業の12カ月先1株当たり利益(EPS)は、現時点で増加傾向が確認されている。三井住友DSアセットマネジメントでは、24年の世界経済の成長率を3%程度、ドル・円相場は緩やかなドル安・円高の進行を想定しており、この見方に基づけば、この先の予想EPSも、比較的落ち着いた推移が見込まれ、株価の支援材料となろう。
企業改革の開示後押し
次に、企業改革に関しては、企業は東証の要請に基づき、資本効率などの改善に取り組み始めてはいるが、その開示は遅れている。そのため、東証は開示を後押しする観点から、24年1月15日より開示企業の一覧表の公表を予定し、その後は一覧表を毎月更新していく方針を明らかにしている。企業の取り組み開示は、24年を通じて徐々に増えていく公算が大きいと考えられる。
賃金については、賃上げ率の具体的な数字がみえてくるのは、来年3月中旬ごろの春闘(春季生活闘争)の集中回答日あたりになるが、23年の平均賃上げ率(3.58%)と同程度であれば、賃上げ継続との見方からデフレ脱却への期待が高まることが予想される。
日経平均株価は、13年5月高値と18年1月高値を結んだ「上値抵抗線」と、12年10月安値と16年6月安値を結んだ「下値支持線」によって、長期上昇トレンドを形成してい…
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週刊エコノミスト
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