社会実装が進むペロブスカイト型太陽電池 政府も量産化を後押し 土守豪
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薄くて軽量な次世代太陽電池の本命であるペロブスカイト型太陽電池。政府の支援も熱を帯びる。
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日本発の技術であるペロブスカイト型太陽電池(PSC)の開発競争が激しくなっている。薄くて軽量であり、曲げられるのが特徴で、政府も開発や量産体制の支援を強化している。中国や欧州でも盛んに開発が進められており、今後は日本が後れを取らずにくらいつけるかが焦点となる。
PSCは「ペロブスカイト」と呼ばれる結晶構造の半導体を用いた新しいタイプの太陽電池で、溶かした材料をインクやペンキのように塗って乾かすと結晶ができあがる。従来のシリコン系太陽電池や化合物系太陽電池と比べると、軽量で折り曲げることができるのが特徴だ。
そのため、ビルなどの建築物の壁面、工場、倉庫などの耐荷重性の低い建築物の屋根など、従来の太陽電池では設置できなかったスペースにも設置できる。すでに、さまざまな国内企業が事業化に向けて動き出しており、今後は一段の導入拡大が進みそうだ。
例えば、積水化学工業は30センチ幅のPSCのフィルム表面に材料を塗布する技術を確立した。耐久性は10年相当で、今後は1メートル幅での量産化技術を確立し、2025年の事業化を目指す。今年10月には大阪市のビル外壁に、フィルム型PSCを国内で初めて設置した。
46階建てに世界初
また、東京電力ホールディングス(HD)は今年11月、積水化学と共同でフィルム型PSCを高層ビル外壁に設置すると発表した。東京・内幸町に建設する46階建てのビルで、発電容量は1000キロワット超を予定。この規模のPSC設置は世界初という。高層ビルは28年度に完成し、東電HDの本社が入居する。
海外でもPSC開発は活発化している。英国ではオックスフォード大学発スタートアップのオックスフォードPVが、ペロブスカイトとシリコン系を組み合わせた太陽電池技術の開発を進めており、25年ごろの量産を目指している。ポーランドのサウレ・テクノロジーズは、電子商品タグ向けなどのPSC開発を進めている。
中国でも15年ごろからスタートアップ企業が複数設立され、多…
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週刊エコノミスト
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