経済・企業

薄氷の楽天モバイル ユーザー増えて新たな設備投資が必要に 石川温

楽天モバイルの三木谷浩史会長。どう立て直すか Bloomberg
楽天モバイルの三木谷浩史会長。どう立て直すか Bloomberg

 目先には巨額の社債償還が迫る楽天モバイル。データ使い放題のプラン導入により、直近では順調に契約者数を増やすが……。

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 楽天モバイルの三木谷浩史会長は今、薄氷を踏む思いかもしれない。2020年に「第4のキャリア」として新規参入したが、思うように契約者を獲得できず、目先に迫る社債償還が経営を圧迫する。足元では契約者数が増加し、悲願の「単月黒字化」も視野に入るが、一層の設備投資負担が生じる新たなリスクもある。

 楽天モバイルの契約者数は22年4月、500万人をピークに減少していたが、22年11月の445万人を底に反転。今年6月に開始したデータ通信が無制限の「最強プラン」が好調で、10月には単月で19・2万契約を獲得し、11月21日にはMVNO(仮想移動通信事業)と合わせて600万回線に到達した。

 このままのペースで行けば、24年末までに「単月黒字化」のラインである800万契約も見えてくる。楽天グループ全体を見れば、EC(電子商取引)や銀行、証券、トラベルなどの事業は非常に順調だ。グループ全体の足を引っ張るモバイル事業をどう立て直すかが喫緊の経営課題となっている。

 気がかりなのが社債の償還だ。1兆円規模のモバイル事業での設備投資により、24年には約3200億円、25年には約4700億円の償還がやってくる。仮に24年にモバイル事業が単月黒字化したところで、巨額な社債償還には焼け石に水でしかない。

 楽天グループでは償還資金の調達に向け、傘下の楽天銀行を今年4月に上場させたが、楽天証券ホールディングス(HD)は11月に上場申請を取り下げた。株式の売買手数料無料化などの影響で収益環境が変化し、楽天証券HDはみずほフィナンシャルグループ(FG)から追加出資870億円を受けることになった。

1000万件が「限界」

 とはいえ、楽天モバイルには追い風も吹いている。総務省が今年10月、つながりやすい周波数帯の「プラチナバンド」を楽天モバイルに新たに割り当てると決めた。損益分岐点の800万~1000万契約に向けて弾みがつきそうだが、1000万契約に近づくことは、楽天モバイルにとって頭痛の種になりかねない。実は、楽天モバイルに割り当てられたプラチナバンドは6メガヘルツ幅しかなく、他社の50メガヘルツ幅に比べれば少ないのだ。

 しかも、4G(第4世代移動通信シス…

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