金利上昇局面で外債の含み損が地銀の経営を圧迫 杉山敏啓
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金利上昇局面となり、債券の売却損拡大が地銀を苦しめている。今後は耐久力の差で、地銀によって明暗が分かれることになる。
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金利がある世界に戻る中、2024年3月期中間決算で3メガバンクは最高益を記録した。金利上昇局面では資産運用利回りが上昇して資金利益の回復に寄与するからだ。だが、地銀の中間決算は純利益の合計が前年より減少した。金利上昇は銀行の資金利益に追い風であるが、地銀が不振となった一因は、値下がりした債券を処理するための売却損の拡大にある。
日本銀行が16年2月にマイナス金利政策を導入したことで、貸し出し取引の収益性は低下し、国債などでの運用利回りも低下した。地銀の多くは、低下した稼ぐ力を補うために、外債や投資信託といったリスクが大きい有価証券による運用を増やした。これらの外債等は、銀行の有価証券では「その他の証券」に分類されるが、地銀の有価証券残高に占める割合は、15年の20%が23年には32%へと高まった。
市場金利が上昇すれば債券価格は下落する。米国の政策金利は17カ月の間に5%以上も急上昇し、米国債価格は急落した。銀行の外債運用では、外国為替リスクを避けるために運用と同額の外貨建て負債を保有する「スクエア・ポジション」を取ることが多い。このため、金利上昇局面で外貨の調達費用が急上昇すれば、外債運用は全体として逆ざやに陥ることがある。逆ざや状態を解消するために、損切りしてでもポジションを手じまった方がましという判断から、債券の売却損が拡大して地銀の純利益の足を引っ張った。
地銀全体の有価証券評価損益は、金利上昇前の21年3月期の5.6兆円が、23年9月期には2.1兆円へと減った。全体としてネットで含み益をキープできているのは株高による株式の含み益のおかげで、金利上昇のために円債と外債等は計2.8兆円の含み損だ。
銀行の有価…
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週刊エコノミスト
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