ジャニーズ事件が突きつけた「ビジネスと人権侵害」 求められる企業のSX力 北島純
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企業に高い人権意識を求める国際潮流が強まっており、メッセージ性のある対応を公にすることが必要になる。
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ジャニーズ事務所(現SMILE-UP.)の創業者、故ジャニー喜多川氏による性加害問題は、2023年の日本社会を大きく揺るがせた。同時に、日本企業にも「人権侵害にどう向き合えばよいか」という課題を突きつけた。問題を糾弾する英BBC番組が23年3月に放映された当初、日本企業が即座に反応したとは言い難い。各社が態度を表明し始めたのは、8月末に外部専門家チームが長年にわたる性加害の事実を認定し、「ビジネスと人権」の観点から批判を加えてからだ。
日本政府は昨年9月、「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」を作成し、大手企業各社は人権デューデリジェンス導入を中心とする「人権指針」を策定していた。今回の事件はその人権指針の実効性が問われる実質的に初めての試金石となった。
注目されたのは広告契約の打ち切りだ。帝国データバンクが今年10月に発表した調査結果によると、ジャニーズタレントをCMなどに起用する企業65社のうち、CM中止や契約不更新を表明したのは33社。対応は二分されたわけだが、政府ガイドラインが「企業は契約を維持したまま人権への負の影響を減少させるべく影響力を発揮したほうがよい」(最後の手段)と一般論を記していたこともあり、CM打ち切りは一部で批判を招いた。
しかし、今回の事件はサプライチェーン(製品の調達製造供給過程)における典型的な人権侵害とは事情が異なる。例えば、下請け工場における低賃金長時間など奴隷的な労働環境がビジネスの中で構築されている場合、企業は人権侵害行為の直接的当事者でなくても、人権侵害を助長・維持させる「加担責任」を問われる。この場合、場当たり的に契約を打ち切っても事態は改善するとは限らず、む…
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週刊エコノミスト
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