金融・調査機関15社に聞いた2024年の米金利とドル・円相場 中西拓司・編集部
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世界経済を左右する米国経済──。政策金利の引き下げ時期やドル・円為替相場の展望について、金融・調査機関各社に予測を聞いた。(まとめ=中西拓司・編集部)
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2024年の米国経済を占ううえで一層注目されるのが、政策金利であるフェデラル・ファンド・レート(FF金利)の動向だ。米国ではコロナ後の経済の急回復でモノが不足し、エネルギー価格も高騰したため21年以降は米連邦準備制度理事会(FRB)が目標とする2%を大きく超えて上昇するようになった。
インフレ緩和のためには金利を引き上げて経済の過熱を抑える必要がある。だが、FRBのパウエル議長は「インフレは一時的」と繰り返し、結果的にインフレの急進を許してしまう。FRBは22年3月、コロナ禍で始めたゼロ金利政策を解除し、金融引き締め方針に転換。政策金利を0.25%引き上げた。その後も段階的に引き上げ、23年7月以降は5.25~5.5%に据え置く。高止まりした政策金利をFRBがいつ見直すかが焦点となる。
FRBの見直しいつ?
本誌は主要金融・調査機関15社を対象に、FRBが政策金利を引き下げる時期や、それを受けて米国のダウ工業株30種平均株価や、ドル・円為替相場、長期金利(10年物国債の利回り)、インフレ率(PCEコアデフレーター=個人消費支出価格指数から食品とエネルギーを除いたコア指数)──がどう変動するとみているのかを聞いた。
FRBは23年中は残り1回(12月12、13日)、24年中は計8回(6週間ごと)、米連邦公開市場委員会(FOMC)を開き、利下げの判断などを協議する。インフレ率などのデータを基に、2年近く続けてきた利上げが高インフレの抑制に効果があったかどうかを見極めて利下げを判断する。そのタイミング予測は各社で分かれた(図1)。
4月30日、5月1日と6月11、12日のFOMCで利下げを判断するとの予測がともに4社。1社は24年第2四半期(4~6月の間)と回答。15社中9社が年前半までの利下げ判断を予測した。
「6月」とみる三菱UFJ銀行は「24年前半にかけて、金融引き締めの累積的な効果による労働市場の一段の減速や個人消費を下支えしてきた超過貯蓄の取り崩しが進み、減速に向かう見通し。政策金利はしばらく現状の水準(5%台)で据え置かれ、24年半ばに利下げが視野に入る」と指摘。同じく伊藤忠総研も「24年前半の景気は停滞する。インフレ抑制にめどが立ち、むしろオーバーキル(やり過ぎ)の懸念が強まるため、FRBは6月に利下げ開始を決定する」としている。一連の利上げで景気が後退しインフレ率の上昇が抑制されるが、景気低迷の代償も懸念する。
みえない利上げ効果
一方、24年前半は利上げによるインフレ抑制がみえず、利下げ転換は年後半に持ち越されるとみるのは6社だ。BNPパリバ証券は「金融引き締め効果は減衰しており堅調な景気が予想されるため、インフレの鎮静は遅れる。利下げ時期は来(24)年後半にずれ込む」と見込む。
いちよしアセットマネジメントも「米国景況感は引き続き底堅く、リセッション(景気後退)を回避し、ソフトランディング(軟着陸)となる。従って、FRBの利下げ転換は年後半にずれ込む」と指摘。年明け以降も景気が好調さを持続し、資金需要が高まって高インフレ状態が続くため、利下げの判断が遅れるとみている。
パウエル議長は23年12月の講演で、利上げによるインフレ抑制効果について「結論付けるのは時期尚早だ」「金融引き締めの効果はまだ十分に表れていない」と述べ、利下げ時期を慎重に見極める…
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週刊エコノミスト
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