クーデター頻発のサハラ南縁部 仏軍撤退後に影響力を伸ばす露ワグネル 吉田敦
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マリ、ブルキナファソ、ニジェールと資源豊富な地域で相次いだクーデター。欧州列強の勢力争いも絡み、危機の悪化が懸念される。
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アフリカのサヘル地域(サハラ砂漠南縁部)で暴力の激化と軍事クーデターの連鎖が続いている。武力紛争地域イベントデータ(ACLED)の報告によれば、サヘルでの暴力(テロ、市民の虐殺を含む)による死傷者数は2022年だけで9000人以上に達した。11年以降、この地域では広域にわたり反政府武装勢力やイスラム急進派勢力との武力衝突が続いており、犠牲者の数は増加し続けている。
特にマリ、ブルキナファソ、ニジェールの3カ国が接する国境地帯では、「イスラム国サヘル州」(IS Sahel)、「イスラムとムスリムを支持するグループ」(JNIM)などのイスラム急進派による攻撃、殺戮(さつりく)が激化。さらに近年では、イスラム急進派の活動拠点がサヘル地域から西アフリカの沿海諸国(トーゴ、ベナン、ガーナなど)にまで広がっている。
続く軍事クーデター
暴力の激化とともにサヘル諸国では軍事クーデターが続く。20年8月にマリで発生した軍事クーデターを皮切りに、21年4月にチャドと9月にギニア、22年にはブルキナファソで2度のクーデターが発生。23年7月には、ニジェールにおいても大統領警備隊兵士による反乱が発生して、バズム大統領が拘束された。
なぜサヘル地域は、イスラム急進派勢力のテロ攻撃や反政府武装勢力による反乱が頻発する「ホットスポット」となってしまったのか。
現在まで続くサヘル情勢の混乱は、大きく分けて二つの勢力の影響を強く受けている。サヘルで長距離交易に従事してきた砂漠の民トゥアレグと、1990年代のアルジェリアで創設されたイスラム急進派勢力を源流とする「マグレブ・イスラムのアルカイダ」(AQIM)である。
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