教養・歴史 2023年の一冊
国境を越えた調達活動で世界の矛盾が露呈 服部茂幸
有料記事
『グローバル・バリューチェーンの地政学』 猪俣哲史著 日経BP、2640円
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グローバル・バリューチェーン(国境を越えた調達活動)は、新自由主義によるグローバリゼーションが生み出したものといえる。多国籍企業がグローバルな活動を進めるために、先進国が作ったルールに途上国が従うという形でのルールの収斂(しゅうれん)が生じている。中国の台頭もグローバル・バリューチェーンを利用した結果だともいえる。ところが、台頭した中国は一帯一路など独自の21世紀型ガバナンスを展開し始めた。逆にアメリカでは製造業の空洞化、ラストベルトの衰退などが生じた。それが米中貿易戦争を引き起こす。
しかし、完全に関係を解消するには米中経済は結びつきすぎている。アメリカによるファーウェイへの制裁などは第三国、特に日本などアジア太平洋地域の経済に悪影響を与えている。領土問題があるにもかかわらず、経済は今では中国に依存しているために、ASEAN、インドの対外政策はアメリカよりも中国寄りになっている(日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランドはアメリカ寄りである)。グローバル・バリューチェーンを…
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週刊エコノミスト
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