人民日報が「同志李克強は決して死なない!」と結んだ訃報を読み解く 田代秀敏
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李克強前首相は2023年10月27日0時10分に上海で心臓発作のため死亡した。享年68歳であった。
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翌28日、中国共産党機関紙『人民日報』は第1面に訃報を掲載した。全2511字(日本語訳で3400字前後)で、19年7月に死去した李鵬元首相とほぼ同じ扱いでありメディアが転載した。
訃報は李克強氏の首相在任中の功績を述べる中で「資源配分において市場が決定的な役割を果たすことを可能にし、政府の役割をよりよく発揮させ、効率的な市場と生産的な政府のよりよい結合を推し進めた」と記した。
これは、李克強氏が国務院総理(首相)に就任した13年の中国共産党第18期中央委員会第3回全体会議(3中全会)コミュニケで唱えられた「経済体制改革の深化にあたっては資源配分において市場に決定的な役割を果たさせる」と呼応しており、李克強氏が主導しようとした市場重視の経済政策に対する現在の党指導部の支持を示唆していると思われる。
このコミュニケは中国共産党の23年までの基本方針の表明であり、そこで06年から顕著となった国有企業がシェアを拡大し民営企業がシェアを縮小する「国進民退」の動向を逆転させ「民進国退」を進める方針が明記されたことは国外からも注目された。
しかし「国進民退」の動向は止まらなかったどころか、拡大してしまった。企業とりわけ民営企業に対する規制は緩和されるどころか強化された上に、米国が18年から中国に対して課している制裁的な高関税は、主に国内市場に専念する国有企業よりも輸出依存度が高い民営企業の経営を圧迫した。
20年からの強力なゼロコロナ対策は多くの企業を経営困難にしたが、政府は国有企業を支援しても民営企業を支援しなかった。その結果、民営企業全体の利益は22年に改革開放以来初めて減少し、中小零細の民営企業の多くが倒産して失業が増え、ゼロコロナ対策解除後も景気回復が遅れている。
民営企業の支援が急務となり、23年7月19日に「民営経済の発展と成長の促進に関する党中央・国務院の意見」が発表されて以来、民営企業の支援策が次々と打ち出されている。
「黄河も長江も逆流しない」
訃報は続けて李克強前首相が「財政、税制、金融、投資、科学技術などの主要分野の改革を調整し、より積極的な開放戦略を実施し、より広い規模、より広い分野、より深いレベルで対外開放を進めた…
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週刊エコノミスト
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