中国経済の不動産不況に回復見えず 効果乏しい景気刺激策 西濵徹
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世界経済のけん引役を果たしてきた中国経済。コロナ後は不動産不況が続くが、回復の兆しはみえてくるのか。
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中国経済は、不動産投資がGDP(国内総生産)の2割強を占めるなど不動産投資への依存度が極めて高い。ゼロコロナの終了による経済活動の正常化が着実に進展している一方、このところの不動産不況の低迷は幅広い経済活動の重しとなっている。2024年もこうした状況が続きそうだ。
足元の中国景気は供給サイドをけん引役にした底入れの動きが続いている。7~9月の実質GDP成長率は前年比プラス4.9%と伸びが鈍化するなど一見では頭打ちしているものの、前期比年率ベースではプラス5.3%と比較的堅調に推移している。
なお、当局は23年の経済成長率について「5%前後」とする目標を掲げていたが、9月末時点での経済成長率はプラス5.2%と目標を上回る。数字上は好調そうにみえるが、前年は当局による突然のゼロコロナ終了を受けた混乱で景気が下振れし、その反動で成長率が上振れしやすいこともあり、5%の成長目標は比較的到達しやすい「射程圏」内にあったとみられる。
一方、名目GDP成長率の伸びが実質GDP成長率の伸びを下回る展開が続いており、デフレーターの伸びはマイナスで推移するなどデフレが意識されやすい環境にある。このところの不動産市況の低迷による資産価値の下落を受けて、不動産担保を受け入れる銀行など金融部門は、経済活動の抑制を招くバランスシート(資産・負債)調整圧力にさらされている。
さらに、ゼロコロナの長期化を受けた若年層を中心とする雇用回復の遅れは、不動産市況の低迷による資産デフレ圧力も重なる形で、家計部門も財布のひもが固くなっている。こうした節約志向を反映するように、価格を比較して購入しやすいネット通販などのEC(電子商取引)が拡大している。ECサイト間の価格競争は激化しており、経済活動停滞から物価の伸びが鈍化する「ディスインフレ」への圧力が強まる一因になっている。
「対症療法」の脱却課題
当局は景気の下支えに向けて1兆元(約20兆円)規模の新規国債発行のほか、地方政府による債券発行などを通じたインフラ投資の拡充に加え、内需喚起に向けた取り組みを強化している。中銀(中国人民銀行)も利下げや預金準備率の引き下げなどの金融緩和を実施し、地方政府レベルも規制緩和などを通じて不動産需要の喚起を図る動きもある。
こうした対策も追い風に、一部の大都市では不動産市況が底打ちする動きがみられる一方で、地方都市では不動産不況の底が依然見通せない状況が続いており、回復の進捗(しんちょく)は都市部と地方で格差が生じている。このため、当面は財政出動や金融緩和を通じて景気を後押しする展開が続きそうだ。
なお、中国では過去にも「何兆元」といった数字ありきの景気刺激策が度々打ち出された。しかし、中国経済にとって、例えば1兆元はGDP比ではわずか0.8%の規模に過ぎず、中国経済を劇的に好転させるほどの規模ではないことに注意する必要がある。さらに、中国の地方政府は独自の財源が乏し…
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週刊エコノミスト
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