中東で欧米は落ち目 中国は存在感アップ 伏兵はトルコ 福富満久
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再び激しさを増すパレスチナとイスラエルの攻防。この問題を震源地に注目すべき三つのポイントを解説する。
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パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスが2023年10月7日に行ったイスラエルへの大規模テロ攻撃以降、イスラエルが連日のように無差別攻撃を繰り返し、中東情勢が悪化の一途をたどっている。一旦は、停戦が合意されたものの、再び激しい戦闘状態に入った。
この問題を震源地として、24年に注目しておくべきことが三つある。
一つ目は、米大統領選に関するものだ。イスラエルは実質的にガザの北半分を占領し、このまま実行支配して撤退しないはずだ。これはロシアのウクライナ政策と通じるものである。米国とその同盟国はロシアを非難する一方、イスラエルの蛮行を認めるのであれば、二重基準外交になる。中東諸国の欧米に対する嫌悪感はますます広がり、国際世論もさらに厳しくなっていくだろう。
二つ目はそれと関連して中東地域で米国の権威は失墜し、中国の存在感がますます高まっていくことだ。サウジアラビアでは「NEOM」と呼ばれる未来都市プロジェクトが進んでいて、中国はどこよりも先駆けて参画する方針だ。
三つ目は、イスラエルとトルコやイランなど中東の主要イスラム諸国との敵対関係が深まっていくことだ。
バイデン政権の無力
米バイデン政権は、23年10月に連邦議会に対し1000億ドル(14.7兆円)以上をイスラエルとウクライナ支援の緊急予算を議会に要請した。イスラエル支援に限定した140億ドル分の予算案だけ可決されたが、24年のバイデン政権は、大統領選挙を控えていることもあり、ますますこの問題で議会との間で駆け引きを余儀なくされ、ガザ戦争のみならず、ウクライナ問題においても抜本的な解決策を提示することはできないはずだ。
米国はイスラエルの自衛権を尊重し、国連安保理の停戦決議案に2度も拒否権を投じている。もはや安保理で米国に従う国もなく、英国が棄権しただけだ。それ自体、米国の落日を物語るものだが、バイデン政権は共和党に足場を切り崩され、内外にますます無能さをさらけ出すことになる。共和党の有力候補であるトランプ前大統領が当選しても、彼は米国ファースト思考で、イスラエル支持者であり、イスラエルの占領を維持したまま停戦がもたらされることがあっても、中東に明るい未来がもたらされることはない。ウクライナに至っても、プーチン大統領と通じて現状維持の停戦となるだろう。
アラブ諸国が北京訪問
中東諸国はすでに米国の無能外交に見切りをつけ、中国に仲介を要請している。イスラエルによ…
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週刊エコノミスト
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