インタビュー「株価上昇は良いことだという国民的コンセンサスが大事」松本大マネックスグループ代表執行役会長
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新NISAは日本の株式市場にどのようなインパクトを与えるのか、マネックスグループの松本大会長に聞いた。(聞き手=稲留正英/安藤大介・編集部)
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── 新NISAをどう評価するか。
■インパクトは巨大になる可能性がある。枠の大きさは、個人金融資産を全部のみ込めるくらいだ。しかし、その枠を作っても、個人のお金が、全て米国株や米S&P500株価指数のインデックスファンドに向かうのなら、そこは問題だ。
日本の個人金融資産を貯蓄から投資に移行させることには二つの意味がある。一つは、資産インフレが進む中での資産防衛だ。もう一つは、もっと意味が大きく、寝ているお金を日本経済の活性化に生かそうという視点だ。お金の行き先が日本国内に向かうような政策も同時に実行していかないと、新NISAの元々の目的(岸田政権の「新しい資本主義」)に合致しない可能性がある。
日本企業の生産性向上を
── 確かに新NISAについては、「海外のインデックスファンドを買えば十分」というような議論になっている。
■新NISAになれば、税優遇も得られるから買いやすくなるが、それだけで、日本株に投資をしてくれるわけではない。例えば、トヨタの車がなぜ売れるかといえば、ディーラーがたくさんあって、また、エコカー減税があることも要因だ。しかし、本当の理由は、トヨタ車の性能や品質が良いからだ。これと同様に、預金でも米国株でもなく、日本株を買いたい、と思わせるようにしないといけない。そこが最大の課題だ。
── 処方箋は。
■まず、そもそも論として、株価が上がることは国や国民全体にとって良いことだというコンセンサスができることが一つ。そうでないと、株価が上がるための施策を打っても、「金持ち優遇だ」という批判で終わってしまう。
株価が上がれば、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が運用する年金資産が増え、国民全員の年金受給額が増える。企業はその高い株価を使って、株式交換という形で、世界中のいろいろな良い会社が買収可能になり、国際的な競争力が高まる。株価が上がれば、オプションや譲渡制限付き株式などの形で、新しい時代のグローバル人材の採用も容易になる。さらに、キャピタルゲイン課税で国の税収も増える。そういう議論を国会やテレビの討論会でするだけでも、株価は上がり始めると思う。
── 最新著『松本大の資本市場立国論』では、日本企業の生産性向上を訴えている。
■経営資源は、「人・モノ・カネ」の3要素からなるが、日本はこの3大資源が適正に配置されていない。例えば、いまだに年功序列、男性優位がある。もっと能…
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週刊エコノミスト
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