経済・企業

個人の空き家ビジネス活発化 主なコストはリフォーム代 谷道健太・編集部

根本さんが購入した群馬県の空き家(根本ユキオさん撮影)
根本さんが購入した群馬県の空き家(根本ユキオさん撮影)

 空き家を活用するビジネスがにわかに活発化している。インターネットでは、空き家を安く買って賃料収入を得るノウハウが盛んに紹介されている。

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 東京都の非営利団体に勤務する根本ユキオさん(38)は2021年、群馬県の空き家を60万円で購入した。それから同県、栃木県、福島県で買い増し、今は計8軒。そのうち5軒を貸し出して賃料収入を得ている。入居当初の賃借人から賃料を取らないフリーレント期間の物件もあることから、賃料収入の総額は月12万~20万円。空き家の購入代金に加え、改修に必要な工具や現地と往復するガソリン代などに総額500万円超を費やしたという。

 根本さんが空き家の購入を始めた動機はサラリーマンを辞めた後の収入を確保するためだ。

「私は朝起きるのが極端に苦手でサラリーマンに向かない。いずれ辞めたいと考えていたところ、コロナ禍期間中に見た(動画配信サイトの)ユーチューブで、地方なら古い物件が100万円以内で買えると知って探し始めた」

 最初に買った群馬県の物件は約70平方メートルの敷地に建つ床面積55平方メートルほどの平屋住宅。築40年以上で居住者が数年間いない空き家だった。売値は200万円だったが、根本さんは60万円に値引くよう要求し、その金額で買った。

「物件を見て、家賃を月3万円と想定した。その家賃で当初1年間の利回り50%を得るには、物件価格は72万円となる。諸経費やフリーレント期間もあることから、それより安い60万円なら買えると考えた」(根本さん)

 不用物などを取引できる掲示板サイト「ジモティー」に「賃料3万7000円、敷金・礼金なしだが、床がへこんでいて残置物がある」と正直に書き込んで入居者を募った。応募したのはブラジル人の4人家族。根本さんは「さすがにくみ取り式の和式トイレはかわいそう」と考え、自力で簡易水洗の洋式トイレに取り換える工事をした。費用は約5万円。さらに大工仕事が得意な入居者から指導を受けながら一緒に床を直した。賃借人がいる5軒中、4軒の賃借人はブラジル人とスリランカ人だ。「日本人ではあり得ない条件でも外国人の需要はある」と根本さんは言う。

賃料3万7000円

 投稿サイト「X」(旧ツイッター)で「クレパン」のハンドルネームで発信する群馬県の会社員男性(32)も、副業として貸家業を営む。自宅から車で1時間圏内にある地域で空き家を探し、10軒を所有。23年には埼玉県北部に建つ延べ床面積90平方メートルほどの2階建て住宅を安く購入した。賃料は月3万7000円で、敷金・礼金は取らない。入居者は80代の高齢女性だ。築45…

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