空き家整理は一般家庭なら料金30万円超 貴重品盗む悪徳業者も 笹井恵里子
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空き家の整理には時間、体力、気力を要する。自力でできない人に代わって作業を請け負う「整理業」が盛んだ。
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私は2021年に刊行した著書『潜入・ゴミ屋敷 孤立社会が生む新しい病』(中公新書ラクレ)の取材をするため、生前・遺品整理サービス「あんしんネット」を営む会社「アールキューブ」(東京都大田区)の作業員として18年から数十回働いた。いわゆる「ごみ屋敷」を含め、民家に出向いて家財の整理や清掃をする仕事だ。
取材の過程で出会ったある50代女性は、一人暮らしだった父親の突然死に伴い、急きょ実家を片付けなければならず悩んでいた。4DKの戸建てには父親の荷物だけでなく、その8年前に亡くなった母親の荷物も残っていた。父親は整理整頓が得意で、亡くなった時、それほど乱雑ではなかったというが、それでも、遺品の仕分けや処分は大変だったと振り返る。
「調味料の中身を捨て、ビンと缶に分ける。中にはどう捨てればいいのか分からない物もあった。賞味期限の切れていない食品やまだ使用できる洋服など、本来なら捨てなくてもいい物を廃棄するために仕分けするのはもったいないし、悲しく、むなしかった。そこで業者にお願いすることにした」
整理業者は数多いが、意識してほしいのは丁寧に仕分ける業者を見つけることだ。着物、骨董(こっとう)品、美術品といった物の価値を見極め、依頼人に適正な買い取り額を提示できる業者が望ましい。そのようなビジネスをするには都道府県の公安委員会から古物商許可を取得する必要がある。さらに廃棄物を処理場に運ぶ業務を営むには市区町村から一般廃棄物収集運搬業許可を得なければならない。
260万円の請求例も
実際には、「遺品整理が専門」と名乗りながらそれらの許可を取得しないで遺品を買い取る、不法投棄する、作業中に見つけた現金や価値のある物を盗むといった違法行為を繰り返す業者もいる。また、依頼人に法外な料金を請求し、トラブルになることもある。アールキューブの石見良教・あんしんネット事業部長はこう指摘する。
「詐欺まがいの行為をしているところもある。トラックに廃棄物を積み込んだ後になって、高額な作業代を請求したり、現金や価値のある品が出てきても依頼人に告げずに勝手に持ち去ったりするケースも。以前、消費者センターから私に相談があった例では、業者は20万円の見積もりを提示していたのに、作業後に260万円を請求したという。業者の中には、廃棄物の処分代金を惜しんで処分場に持ち込まず、無料で出せる家庭ごみとして捨てることもある」
廃棄物処理法が規定する不法投棄に該当する行為だ…
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週刊エコノミスト
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