相続税の“タワマン節税”封じ 相続税評価額を市場価格の6割へ引き上げ 角田壮平
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マンションの築年数や階数、立地の良さなどを加味して相続税評価額を補正することになった。
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今年1月からマンションの相続税評価が見直された。一部の富裕層の間ではマンションが相続税の節税商品として活用されており、それを封じる狙いである。マンションは一般的に市場価格と相続税評価額に大きな乖離(かいり)があり、特に敷地面積に対して総戸数の多いタワーマンションほど大きくなる傾向がある。この乖離の大きさを活用して、いわゆる「タワマン節税」が行われていた。
国税庁は昨年、マンションの相続税評価を見直す有識者会議に提出した資料の中で、2018年までのデータを基にマンションの相続税評価額と市場価格の乖離率を調べた結果を掲載した。乖離率は「市場価格÷相続税評価額」で算出し、18年の乖離率は「2.34」となっていたが、1億円で購入したマンションの相続税評価額は4273万円になるということである(1億円÷2.34)。
1億円を現金で保有したまま死亡した場合には、1億円に対して相続税がかかるのに対し、生前に1億円の現金でマンションを購入した場合には4273万円の評価になるため、マンションを購入しただけで相続財産を5727万円も圧縮できることになる。これが、総階数20階以上のタワーマンションになると、乖離率は3.16(1億円で購入したマンションが3164万円の相続税評価額)にもなる。
特にタワーマンションの場合、上層階ほど眺望の良さなどから市場価格は高くなりやすい。しかし、これまでの相続税評価の算出法では、同じマンションで同じ専有面積ならどの所在階でも相続税評価額は同じとなっていた。そうした算出法を見直し、これまでの相続税評価の算出法をベースとしながら、今年1月からは少なくとも市場価格の0.6倍までマンションの相続税評価額を引き上げるよう補正することになった。
見直し後の評価方法の対象となるマンションとは、「3階以上の区分所有建物の居住用の一室(いわゆる2世帯住宅は除く)」である。したがって、2階以下の低層の区分所有マンション▽区分所有オフィスビル▽区分所有された2世帯住宅(専有部分が三つ以下で、そのすべてが被相続人や親族所有の2世帯住宅に限る)▽区分所有がされていない一棟マンション──は対象外となる。
立地の良さなど加味
なお、居住用の区分マンションをオフィスとして使用している場合でも、構造上は居住用にも使えるのなら、見直し後の評価方法の対象と考えられる。また、区分所有されていない一棟マンションが改正の対象から除かれていることにも留意が必要である。見直し後の計算式が、市場流通性の高い区分所有マンションの過去データを基に算出されているためである。
一棟マンションのような売買事例データが少ないものまで含めてしまうと、かえって計算式の合理性が失われることとなるため、致し方ないのであろう。今回の見直しの端緒となったのは、一棟マンションを活用した相続税の節税事案が争われた22年4月の最高裁判決であったが、こうした事例に対しては国税庁は今後も「財産評価基本通達」の総則6項を用いて、例外的に他の評価方法を適用することになると思われる。
見直し後のマンションの相続税評価額は、まずマンションのA築年数、B総階数、C所在階、D敷地持ち分狭小度──の四つの指標…
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週刊エコノミスト
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